二日目 六年前の出合い

 僕は目を覚まし時計を見ると七時だった。

 そして自分の右側に目を向けて見た。

 そこには小学四年生ぐらいの幼女が寝ていた。

 そう、妹だ。

「なんで、お前がそこに居るんだよ!!」

「えーだってもう付き合ってから十年も経つんだし……ね?」

 十年ということは生まれてから付き合っているのか……。

「ていうか義妹ならまだしも、実の妹に恋愛感情を抱くことはほとんどないって遺伝子レベルで証明されているんだよ!!」

「私たちの関係ってそんな障壁すらも越えられないものだったなんて……ぐすん」

「そうだよ!」





 そんな他愛もない会話をし、橘の作った朝食を食べて学校に行った。

 そして学校の校門を通り靴箱の前まで来た。

 今日も昨日と同じく、一人も学校に来ていない様子だった。

「今日も早過ぎたか……」

 そんな小言を呟きながら、昨日と同じように教室に入り、物理的に一人の教室に入った。

 そして昨日と同じように席に座り、昨日と同じ足音が聞こえてくる。

 ここで昨日と違うことが起こった。それは、扉を開けた音が昨日のように弱々しくはなく、決意を固めたような音だった。

 そしてその昨日の女の子が迷わずにこちらに向かってきた。

 その女の子は口をゆっくりと開け、話し出した。

「実は私、君のことが好きなんだよ」

 僕はその言葉に驚いてしばらくの間、開いた口が塞がらなかった。

「ごめんなさい……」

 そう僕は答えると、目の前の少女は落ち込んだ様子ではなく、意外にも冷静な様子だった。

「分かった。じゃあ本題に入るけどさ、橘のこと昔好きだったけど、実は今も好きなんでしょう?」

「えっと、まあうん。橘のことは好きだよ」

 僕は女の子の目を見ながらそう言った。

「そうなんだ……でも、小浮気には私より橘のほうが合ってるからそれでよし!」

 ハナイカリのようなその人は、花が散り、枯れきっていたが、ハナイカリの花言葉のとおり希望に満ちていた。

  






       ー六年前ー

「なんで崖から飛び降りようとしたの?それはしちゃいけないんだよ」

 六年前に僕は崖から飛び降りようとしていた女の子を助けたのだ。

「ママとパパが交通事故で死んじゃって、おばさんに引き取られたけどおばさんが

 いじわるしてきて……だから、ママとパパに会いに行こうとしたの」

 その女の子は泣きながらそう言った。

「でもそんなことしてもママとパパには会えないよ」

 その女の子は涙を手で拭ったあと、僕の目を不思議そうに見てきた。

「だってママとパパは君に試練を与えてるからさ、それを乗り越えないとママとパパには会えないんだよ」

 その女の子はしばらく口を開けたままになっていたが、少し時間が経つと理解したのか口を閉じて純真無垢な瞳で、溢れんばかりの笑顔を見せた。

「うん! そうだね! 分かった。私、がんばる!」

 僕はその笑顔に恋をしてしまった。

「僕の名前は『小浮気隆司』。君の名前は?」

「私の名前『橘真美』っていうの」

 僕は六年前にも橘に出会っていた。そしてそのとき初めての恋、いわゆる「初恋」ってやつをした。




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