芥川龍之介作品の香りを嗅ぎ取りました。キャッチフレーズや設定に『藪の中』、語り口に『魔術』の要素を感じたのですが、邪推でしょうか。無論、パクリだということではなく、古風な味わいがあって良いという意味です。セリフの一部を地の文に書くタイミングが絶妙でした。
一つの事件にとある怪奇が絡んでいるのですが、不思議な話で終わらない点が魅力的です。人の心の複雑さも描き、読んでいる途中で何度もぞわりとしてきました。特にラストの一文は秀逸です。メルヘンとは程遠い、あるいはむしろ本当の意味のメルヘンに切迫しているような一遍です。
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