青春の古傷を抱える人へ

私は彼のライトノベルSF小説が刊行された当時ザ・スニーカーという雑誌を購読していた。RAGNAROKとトリニティブラッドをを読むためだ。
水星、どころかミサイルのように現れた涼宮ハルヒの憂鬱という怪物はアニメ化に伴い雑誌の紙面を塗り替えた。(それまでも画一化されていたわけではなかったが)
年の半分以上はいわゆる萌え絵が表紙を飾り、毎度のように巻頭カラーには奴がいた。
何年もそんな様子が続き、メディアミックスが洪水の如く作られ引いていく中、涼宮ハルヒの憂鬱は小説の続刊が全く出なくなった。
売れに売れた売れっ子が何故とまったか我々は分からず、インターネットに答えを探した。
噂はすぐに出てくる。所謂都市伝説と言っていい。
出来の良すぎる二次創作に作者がショックを受け筆を折ったと云うものだ。
馬鹿馬鹿しい、当時はそう思い私は涼宮ハルヒの憂鬱を忘れていった。完結しない悲しみと寂しさを感じながら。

もしこれが本当にそうだとするならば私は納得せざるを得ない。こんな物を見せられたら私だって結末を投げ捨てたくなる。完璧だ。
筆者は涼宮ハルヒの憂鬱を読み込み、シリーズを愛し、キャラクターの幸福を願ったのだろう。
長谷川流の綿密に面白おかしく組み上げた千年パズルの最後のピースを筆者は自力で作り上げてしまった。

私はこの二次創作を読んでよかったと思う。
青春の古傷を今ようやく治療できた気がしたからだ。
今は寧ろこの結末以外無いだろうとすら思う。

願うのは投稿者が本物の当稿の筆者であり、今も小説を書き続けていることだ。貴方の書いた推理小説を、私は読みたい。

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