涼宮ハルヒの微笑
かめ
プロローグ
俺たちの高校生活最後の冬。俺とハルヒの意地の張り合いがもたらした、二度目の世界崩壊の危機。
そうだ。俺が弾を
あれから既に長い
全宇宙規模で発生した閉鎖空間。その内部では、ハルヒを知る存在たちが一堂に会し、好意的に見ればそれは、ハルヒ杯争奪全宇宙オールスター対抗大運動会(強制参加型)とも言うべき様相を呈していた。
閉鎖空間内では、現状維持派と急進革新派とのあいだで様々な
情報制御すらままならず物理的攻撃が不可能な敵対的広域帯宇宙存在たちは、以前の雪山のような方法でSOS団への精神的攻撃を試み、未来を予測可能である敵対的未来人組織たちは、俺たちを内部分裂させるべくハルヒと俺に対してあらゆる工作活動をおこない、閉鎖空間内でその力を存分に振るえる敵対的超能力者たちは、赤い光となって俺たちに攻撃を仕掛けてきた。
長門は制限を
当然の反応として、この超常的展開に一人狂喜するハルヒは、以前俺が見たものよりも質、量ともはるかにパワーアップされた神人軍団を無意識的に生み出し、敵対勢力を次々となぎ倒しはじめた。
だが神人の活躍もむなしく、一人また一人と倒れてゆくSOS団員。
そうしてハルヒはついに、これが自分の望む世界の
閉鎖空間の終焉は、やはりというべきか、俺とハルヒのキスによるものだった。
以前のような、
俺の場合は、なによりも俺自身の想いをはっきりと認識し、覚悟することになったわけだが。
一度目と同じ、あのグラウンドで、俺たちは永遠とも思えるほどの長い時間を共有していた。
唇を重ね合わせ、お互いをしっかりと抱き寄せて。絶対にこの手を離したくないと思った。ハルヒだってそう思っていたはずだ。
俺は、本当に心から時間が止まって欲しいと感じていた。世界が変わったとさえ思える瞬間だった。
いつしか閉鎖空間は消滅し、俺はまた自室で目覚めた。今回はベッドから転げ落ちることもなかった。
フロイト先生もきっと祝福してくれていたに違いない。
その後、立て続けに携帯が鳴った。
最初の電話は長門からだった。
「六年前の涼宮ハルヒによる情報爆発、それを超える二度目の情報爆発が観測された。それと同時に、情報統合思念体は自律進化の
と、いつもの淡々とした口調でそれだけを述べ、電話は切れた。
なんてことだ。それはあのキスが原因なのか? まさかそんな大それたことが起こっていたとは。
ところで長門、お前自身は感謝してくれないのか?
長門の電話が切れるなり、続けざまに古泉から連絡があった。
「機関の方がかなり混乱していまして、
その口調の端々に本心からの喜びがうかがえた。
どうやら、キスの瞬間に感じたことは事実だったようだ。本当に世界は大きくその様相を変化させてしまったのだ。本来あるべき姿に。
それから数分後、最後は予想どおり朝比奈さんからの電話が鳴った。
「キョ、キョ、キョン君っ!」
明らかに混乱していた。当然ながら、俺には朝比奈さんが次に何を言うのか想像出来る。
「すすす涼宮さんからの、じじ時空振動が、けけ検出されなくなりましたっ!」
「解りましたから朝比奈さん、とにかく落ち着いてください」
電話口からゆっくりとした深呼吸が数回聞こえた。落ち着きを取り戻した朝比奈さんは、
「涼宮さんに関係する時空の不確定要素が消滅しました。つまり未来が確定されました」
そして、少なからず寂しそうな声で、
「わたしの役目もこれで終わっちゃいました。
そうか。ついに朝比奈さんともお別れなのか。あなたのお茶が飲めなくなるかと思うと、俺も本当に寂しいですよ。
このようにして、唐突に始まった涼宮ハルヒを取り巻くありとあらゆる不思議な現象は、唐突に終わりを告げたのだった。
そう思っていた。これが実は終わりなどではなく、本当の意味で全ての始まりになることなど、当時の俺には全く想像出来ないことだった。
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