ひんやりとした不安。

この小説を表すなら、そんな言葉になるでしょうか。どこにでもありそうな、しかしあることを拒絶したくなるような現象にこそ人は恐怖を抱くものですが、これにはそれがしっかりと描かれています。蔵の中の、暗く冷たそうな描写も見事。どこか乾いた、突き放したような文体が、読者の寄る辺のなさを強調するようになっていて、良いです。