生活に疲れ果てた成人男性が、駅で幼なじみの男と再会したのをきっかけに、全部投げ出して旅に出るお話。
現代もののボーイズラブ、それも社会人のお話です。
もう冒頭からいろいろ大変というか、主人公の勤める会社のブラックっぷりがすごい。
どう見ても精神の健康を害していて、「とにかくなんでもいいから早く逃げて」と思って読んでいたところに、颯爽と登場する顔のいい幼なじみが素敵。いや本当、彼が出てきてくれただけでなんだかほっとするような感覚があって、それがとても印象深いので……。
旅の光景そのものは解放感に溢れ、またノスタルジックな場面もあるのですけれど、でも「どうもそれだけではなさそう」と思わせるほのかな違和感が好きです。
ただハッピーなだけではない、というか、明らかにいろいろおかしな光景。そもタイトルに「呪」なんて文字が入ってる時点で呑気なお話とは思えず、その真相のようなものがじわじわ見えてくる感触が独特でした。
ネタバレになるので詳細には触れませんが、最終話が好きです。
いろいろと壮絶な出来事と、それに臨んだ彼の決断と行動。垣間見える思いの深さのようなものが沁みる作品でした。