侍の話。それが如何にも侍らしい話。でも、人間らしい話かな。

当然の事だけど、桜の咲き具合が本作品の通りに落ち着いて、良かった。もし、違っていたら、枯れた哀愁漂う作風が台無しになるところだった。
その作風に感情移入する読者が老人には多いと思う。私も玄馬の想いは能く判る。自分が生きていた痕跡を何か残したい、と思うものだ。
玉手箱を開けた後の浦島太郎。小一郎の気持ちとは、そんな感じだったのではないかと思う。終末を目前とした者の達観とでも言う感情か。
でも、西村京太郎のインタビュー記事を読んでいたら、「年老いても欲は枯れないね」だって。所詮は「老人は枯れるもの」なる思い込みの産物なんだろう。
短編にはMAX2つが信条ですが、星3つ付けました。