エピローグ うちの姉貴はエロゲ声優
エピローグ
リビングのドアを開けると、姉貴が喘いでいた。
「そこはらめえええぇぇぇぇ! わたしの●●●●がおかしくなっちゃうよおぉぉ!」
「・・・・・・・・・・・・ただいま」
帰って早々、交通事故に遭った気分だ。
俺に気付くと姉貴はころっと声を普段のものに変えた。
「あ、おかえりー。今日は遅かったね」
呑気に笑う姉貴を見て、俺のやる気メーターが一気に下がるのが分かった。
同時に怒りのメーターがぐんぐんと伸びていった。
「おかえりじゃねえよっ! この馬鹿姉っ! 何度言えば分かるんだっ! リビングで喘ぐなって言ってるだろっ!」
「ええ~。だってえー」
「だってじゃねえっ!」
俺がいくら言っても姉貴は言い訳を並べる。。
まるで子供だ。
いや、子供がエロゲの台本を読まないか。
俺はむしゃくしゃして前髪を掻き上げた。
「ああくそ! こんな姉貴の為に書こうとした俺が間違ってた」
「え? なんの話? あ、もしかして昨日がんばってたのって・・・・・・」
どうやら気付いたらしく、姉貴は恥ずかしがっていた。
口が滑った俺は素直に頷いた。
「そうだよ。俺がシナリオライターとして売れたら、姉貴を声優に使ってやろうと思ってたんだ。でもそれも・・・・・・。なに泣いてるんだ?」
姉貴の目からは涙が一滴流れていた。
それを見て、俺も姉貴も驚いていた。
姉貴は笑いながら涙を拭う。
「ちがうの・・・・・・。涼君がわたしの為になにかしてくれたのが、嬉しくて・・・・・・」
「・・・・・・バカ。早すぎるだろ」
俺は呆れながらハンカチを渡した。
この涙を見れただけでも、俺の選択は間違ってないと思えた。
姉貴はどこか嬉しそうに涙を拭く。
「そっか・・・・・・。じゃあ、将来は涼君が書いた台本でお姉ちゃんは喘ぐんだね」
「なんでそうなるんだ。俺が書くのは一般向けの話だ。喘ぎ声なんてないよ。多分」
「チュパ音も?」
「それは絶対にない」
俺にはずっと思っていたけど言えなかったことがある。
それを覚悟を決めて言った。
「俺が売れないエロゲ声優をアニメ声優にしてやるよ。だからそれまでちょっと待っとけ」
それを聞いた姉貴はまた泣き出した。
「涼君・・・・・・。涼く~ん!」
「おわっ!」
がばっと抱き付かれ、勢いに負けて押し倒されてしまう。
俺の名前を呼びながら泣いて喜ぶ姉貴を俺はそのままの格好であやした。
「・・・・・・まあ、あんまりあてにはすんなよ」
「うん・・・・・・。涼君が売れっ子作家になるまで、お姉ちゃんは頑張ってエロゲで稼ぐね」
「・・・・・・いや、できるなら姉貴もがんばってくれ。アニメのオーディションとかはちゃんと受けろ」
「落ちたらまた慰めてくれる?」
「俺以外に慰める相手が見つからなかったらな」
「うわーん。涼くーん。慰めてー」
「はいはい」
また落ちたのか。
そのあとしばらく甘える姉貴の頭を撫でてやった。
「弟の書いた作品に出たら、ネットで叩かれないかな?」
「今からそんなことを気にしてどうするんだ? ペンネームにすればバレないだろ。あとこうやって甘えてこない限り大丈夫だよ。はい、終わり」
俺は手を止めて立ち上がった。
「ええー。もうー?」
姉貴は名残惜しそうに俺を見上げる。
「夢は語ってるだけじゃ叶わないからな。今日中にプロットってのを書かないといけないんだよ。じゃあ二階で書いてるから晩飯になったら呼んで」
「はーい。・・・・・・よし、わたしもがんばるね!」
姉貴も立ち上がり、台本を手に取った。
「そこは違うとこなのおぉ――――」
俺はすぐさま台本を奪い取った。
「読むなら部屋で読めって言ってんだろうがあぁっ! この馬鹿姉ええぇっ!」
まったく、何度言っても変わらない。
どうにかして俺も早く売れないと。
いつまで経っても、うちの姉貴はエロゲ声優だ。
うちの姉貴はエロゲ声優 歌舞伎ねこ @yubiwasyokunin
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