「うつす」は写す? それとも映す?
最近はめっぽう暗いニュースが続いて、なんとも出来の悪いフィクションのような毎日です。事実は小説より奇なりと言いますが、小説に事実のようなことを書いても「リアリティがない」と言われるオチなのはなんとも納得のいかないものです。
かの
「
現実というのは夢みたいなもので、夢の中のことこそが本当のことなのだと。
そういう意味だそうですね。
さて、「
いくつか並べてみましょう。
どれも漢字を見れば、何となくは意味合いが分かりますが、それぞれの漢字の使い分け、ちゃんと説明出来るでしょうか。
「うつす・うつる」について用法・用例を見ていきましょう。
今回も参考にしたのは「NHK漢字表記辞典」です。
【
「写真」「写実的」などの表現から分かるとおり、この「
このため写真に関する文章の場合は、「
(例)・答案を
・お分かりいただけただろうか。顔のようなものが
【
「映画」「映像」などのイメージが分かりやすいですが、こちらの「
映像とは別のところでは「影が障子に
また、「世相を
(例)・鏡に映ったあなたと2人。懐かしさとたくましさを感じる。
・水面に
【移す】
こちらは上記2つとは全く異なり、一つのものが別のところに移転、移動するような場合に使われます。
とはいえ、冒頭の「
(例)・ここじゃ何だから、ちょっと場所を
・君もスマホか。時代の
【
「移す」に近い言葉ではありますが、こちらは明確に「
また、別の辞書などでも用例としてわざわざ「首都を
(例)・王の命令のもと、都は三度も
【
病気や癖、あるいはあくびなどがうつる場合はこの漢字になりますが、明らかに当て字であり、通常は使用しません。従って、この意味で使うときにはひらがなの「うつす」が適当かと思います。
個人的には、この当て字の知名度が上がった要因のひとつとして「
(例)・おいおい、変な病気を
以上が、「うつる」の漢字の使い分けの大まかな説明でした。
ここからは長い長い余談の始まりです。
さて今回、なぜ「うつる」を題材にしたのでしょうか。
そう、実は最後の「
この文章は、2020年の4月に書かれました。
あなたがこの文章を読んでいるのはいつでしょうか。私が書いたときからそう遠くないかもしれません。はるか未来かもしれません。
今、世界は新型コロナウイルスによる災禍の真っただ中です。世界各国の感染者が何人、死者が何人、と連日連夜の報道が続いています。
海外のいくつもの国で渡航が禁止され、東京もロックダウン間近、などと言われつつ先日ついに「緊急事態宣言」が発表されました。
未知の感染症を前に、人類はあまりにも無力です。まるで出来の悪いフィクションのようなありさまです。
"「人類の敵」が現れても、世界は一致団結なんかしない"
フィクションではさんざん言われた言葉ではありましたが、確かにこの局面になってそれが本当であると、まざまざと感じます。人類は、共通の敵に対しても全く一つになりません。
「あの国はやられた、せめて自分の国だけは」
「あの町はやられた、せめて自分の地元だけは」
「あの家はやられた、せめて自分の家族だけは」
「せめて自分だけは」
「せめて自分だけは」
「せめて自分だけは」
あなたがこの文章を読むとき、世界はどのように変わったでしょうか。前と同じかもしれません。全く違うかもしれません。
人類は無力で愚かなままでしょうか。災禍を経験して、少しは賢くなったでしょうか。
そうした世界の【
そう思って、こんな題材にしてみました。
私に、今の世の中のためにできることなどありません。
しかし、
私はそのように思っています。
全く、人類って困ったものですね。
なんとも困った日本語講座 たはしかよきあし @ikaaki118
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