常用漢字って何なのさ?
さてさて、久しぶりのテーマはズバリ、「常用漢字」!
最近ネットでは、
「難しい漢字を小説に使ったら"それは常用漢字ではないから使ってはいけない"と言われた」
という話題があったり、この「何とも困った日本語講座」でも、
「よく使う漢字だけど、常用漢字じゃないって初めて知りました」
というコメントが寄せられたり、私としても少しばかり「常用漢字」について考えるところが出てきました。
カクヨムでこの文章を読んでいるのは、少なからず文章創作の経験のある方が多いと予想されます。
ですからもちろん、「常用漢字かどうかなんて、見ればすぐに分かるぜ!」という方が多い……ですよね?
ですよね?
というわけで、今回はこんな簡単なクイズを用意してみました。
次のうち、「常用漢字表」に載っているのはどれでしょう?
①
②
③
皆さんには簡単すぎる問題だったかもしれませんね。
ちょっとだけ考えてから、答え合わせは下へスクロールして見てくださいね。
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さて、今回のクイズの答え合わせをする前に、常用漢字というのはそもそも何でしょう、という話をしていきましょうか。
時代は、太平洋戦争ごろの話になります。
日本では「漢字廃止論」が叫ばれていました。
これは簡単に言えば「漢字は難しくて学習の妨げになるから、ひらがなカタカナ(orローマ字)だけにしよう!」という主張です。
これが戦後のGHQの統治時代に合致し、漢字を使うのやめようぜ! という今では暴論としか思えない考えが本当に推し進められていました。
しかし、いきなり漢字を使うのをやめるのは大変難しいことです。
そこで、政府は1946年に「しばらくはこの漢字だけは使うことにしよう」という漢字を制定しました。
それが1850字から成る「当用漢字」(当面の間だけ使用する漢字)でした。
時代が進み、漢字の使用と学習の習得にはほとんど関係がないことが分かり、やっぱり漢字は必要だよね、という考えに世間が変わってきました。そのため、今度は「これからずっと使っていく漢字」を決める必要が出てきました。
それが1981年に作られた、1945字から成る「常用漢字」(今後、常に使用する漢字)でした。
これが2010年にさらに文字数が追加され、2136文字になり、今も使われ続けているわけです。
常用漢字の意義は、「常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)」の前書きにこのように書かれています。
"この表は,法令,公⽤⽂書,新聞,雑誌,放送など,⼀般の社会⽣活におい
て,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すものである。"
こういった性質があるため、日本の義務教育ではこの「常用漢字表」に含まれる漢字は全て教えることになっています。そして、テレビや新聞はこれを目安として使用する漢字と使用しない漢字を選んでいます。
逆に言えば、「常用漢字表」に含まれている漢字であれば、特別な読み方以外は、ふりがなを使わなくても、日本人は一応は読めることになっている、ということです。
さて、前置きが長くなりましたが、クイズの答え合わせをしていきましょう。
①「
これは常用漢字表には載っていない漢字です。載っていると思って、引っかかった人が多いんじゃないでしょうか?
2010年に追加された漢字があったと先ほど述べましたが、実はこの「
ですが、追加されなかった。
いろいろな事情のもと、追加されなかったのだとは思います。しかし、この「
②「
常用漢字表に載っているのは、この「
ふだん使う文字ではないものの、「
ただ、一般的には「
ここまで来ればお分かりのとおり、③の「
しかし、勘のいい皆さんならもうお気付きかと思います。
この「
時はさかのぼること2011年3月。
未曾有の大災害と言われた東日本大震災がありました。死者は1万人を超え、安全と言われた原子力発電所は事故を起こし、あらゆる被害が甚大。被災地は絶望のふちに立たされました。
そのさなか、復興のスローガンとして頻繁に使われたのがこの「
町なかのポスターや横断幕には「
この年、日本漢字能力検定協会によって選ばれた「今年の漢字」も当然のように「
これだけ世間で使われるようになった言葉です。常用漢字に載っていなくても、どうにか漢字のまま使えるのが望ましい、と考えられたのでしょう。
そこで日本新聞協会の「新聞用語懇談会」の協議の結果、新聞・テレビでは「常用漢字」とは別に「独自に使用する漢字」として「
常用漢字というのは、「
これは目安でしかないものですから、「
常用漢字外の文字を使うとき、「この文字は読めない人がいるかもしれない」と考えて、ふりがなを使ったり、別の漢字に置き換えたりするというのが配慮として適切であることは間違いありません。
しかし、公共の性格の強い新聞やテレビですら、「常用漢字表に載っていなくても、学校で習っていなくても、断固としてうちはこの文字を使う!」という独自の判断を持っているのです。いち表現者でしかない一般のweb小説作者であればなおさらのことです。
「常用漢字であるか否か」は、作者を否定する材料には決してなりえない、と私は考えます。
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