Day4
よく来たな。俺はジョン=スパイラル・グッドスターだ。今日は、俺の相棒を紹介しよう。
サイド・バイ・サイド(注:水平二連)、12ゲージのショットガン。それが俺の相棒だ。メーカーがどうとか、そういうのは知らない。こいつはそんなくだらないことは語らないし、俺も興味はない。
このショットガンは、剣やまほうとは違う。剣筋がどうとか、狙いを定めるとか、呪文をとなるとか、HP(ハラペーニョ・ポイント)とかMPとかそういうのはない。どこに向けるか、いつ撃つか。それだけだ。ただそれだけの、シンプルな武器だ。
代わりに、何かバフで威力が増したりとか、属性がどうとか、そういうのもない。相手がミンチになるか。ならないかだ。シンプルな、しんの男のための武器だ。しんの男のための武器だが、ミラ・ジョヴォヴィッチとかもだいぶしんの男なのでゾンビを撃ち殺すことができる。
勝負は、一発だ。実戦で悠長に弾をこめ直す必要などない。何故なら、次の瞬間には、お前はミンチになっているからだ。
しかし、戦場は射撃場(シューティング・レンジ)ではない。一発に賭けるのはいい。だが、背後から敵が襲ってきたら? そのためにも、二発だ。一発では少なすぎ、三発では多すぎる。四発はもってのほかだ。
俺は、二発の弾を込め、呼吸を沈めて銃を向けた。目の前にいるのは、モンスター……棺桶と同じくらいの大きさの、巨大なグサノだ。わかりやすく言えば、イモムシだ。メキシコでは、素揚げにすれば食べられる。サイズはデカいが、毒があるかどうかは仕留めなければわからない。
バゴン!バゴン!
引き金を弾くと、巨大グサノが四散する。
さて、ここで俺はある問題に気付いた。
俺の相棒は、敵をミンチにすることに長けている。だが、今回は、そのミンチをたべる必要があるのだ。
ショットシェルをばらし、底を叩いて火をつける。
ぐちゃぐちゃの肉塊を汁ごと小さな鉄鍋(ダッチオーブン)に詰め込み、ぐつぐつと煮込む。よく火が通ったら小さく口に含み、鉛の粒を吐き出す。
食事、というよりは食料。むしろ、燃料と言っていいだろう。せめてチリソースがあればよかったが、無いモノをねだるのは間抜けだ。それでも、あとせめて豆があれば、と思わずにはいられない。
まあ、今日のところは、こんなものだろう。多くを求めれば、多くを失う。
俺はポンチョを天蓋がわりに張り、空を見上げる。
メキシコに空はない。このダンジョンは土の底のメキシコだ。時間の感覚は体感でしかわからないが、多分今日で4日目。普通のモグラ(モール)なら、仲間を「あきらめる」頃合いだ。
しかしあいにくと、俺はまだ生きている。このドリトスもチリコンカンもない地の底でだ。地上に出る頃にはきっと、ずいぶんと健康になっているに違いない。
ひとりぼっちメキシコ 碌星らせん @dddrill
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