第3話ミルトス認証システム

JICCに着く頃にはリリカからレポートが送られてきた。侵入は、いわゆば人的な問題で、システム的な問題ではないと結論付けている。

早速、中村とのミーティングに向かい、リリカの分析を伝えると、中村も同じ見解だと頷いた。ただし、目玉の一つにしているミルトス認証システムが破られた点は大きな問題だと指摘した。確かにその通りで、すぐに原因を探らなければならない。認証に使われたスマフォがあれば手掛かりがつかめるのだが、平野が正気を取り戻した時には手元になく、犯人に盗まれたようだ。考えあぐねていると、厳しい顔をしていた中村がニヤッと笑い、原因ならもうわかっている、と話し始めた。


中村は、JICCが利用するミルトス認証システムを改造し、システムが立ち上がっている間、スマフォのカメラで動画として記録、リアルタイムでJICCに送信している、と話した。平野が使っているミルトスも、当然その仕組みが入っている。

そして、僕はもう見たけれど、と言いながら動画の再生を始めた。


再生が始まるとすぐに、山口というJICCの古株の研究者の顔が映った。山口は平野の同僚で、やはり暗号の研究をしている。スマフォが動くと、意識を失った平野が映った。山口は平野の手を取り、平野の指を使って指紋認証を試みているようだ。何度目かの操作で認証に成功し、スマフォが放り投げられた。

中村が言うには、山口は酒に弱い平野に酒を飲ませて意識を飛ばし、平野のラップトップを使ってMO-AADOにログオンをした。平野のパスワードは、職場でショルダーハック(盗み見)していた可能性が高い。そして、ミルトス認証システムを平野の指紋で突破した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る