第10話FRUSTRATE
きっちり一か月後に、中村がPT4CSの認定証を持ってきた。幸か不幸か追加のリクエストはなかった。嬉しくはあるのだが、馬鹿にされたような違和感が残っていて、素直に喜ぶ気になれない。すると中村が、お祝いをするんだと、楽しそうにナオミに声をかけている。もはや止めても止まらない。
俺からは、CTOのケン、ビジネス開発のノリック、パートタイムCFOのシゲルに声をかけた。そしてリリカに申し訳ないがと、監視を依頼し、何かあればいつでも連絡をくれと付け加えた。言い訳ではなく、リリカはパーティよりもプリマヴェーラが好きだと言って憚らない。今もプリマヴェーラのオペレーションコンソール、アフロディテの前で鼻歌を歌いながら操作している。プリマヴェーラの動作環境はラ・パルテ・アルシオネ、日本語ではオレンジの庭と呼んでいる。本来は、ヴィーナスの庭だが、ここではリリカの庭になっている。
行きつけのイタリア料理屋に押し掛けると、昔働いていた会社の流儀で、ガラスのハイヒールの回し飲みでパーティを始めた。あまり騒ぐな、と言ってきた店主に無理やりハイヒールを持たせ、飲んでいる間もシャンパンを注ぎ続ける。いつまでも飲み切れない店主が音を上げ、とにかくあまり騒がないで、と言って逃げていった。
食事が終わるころには、グラッパを入れて回す奴が出てきた。これ以上続けると、さすがに仕事に差し支える。ケンに締めを任せてパーティをお開きとし、中村と二人で、近くのワインバーに向かった。
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