迷宮は女に似ている……深く、甘美で、危険な血の臭い。

ウィザードリィ好きにはたまらない小説。

随所に作者のウィザードリィ愛が感じられて、あのゲームが好きな人間の琴線にビンビン触れてくる。

登場人物はみんな泥臭く、そしてみすぼらしい。持たざるものたちだ。
しかしそんな彼らだからこそ、死と隣り合わせの迷宮でほんの微かな生をつかみ取ることが出来るのだ。

だが彼らは ”アウトサイダー” であっても ”アウトロー” ではない。
時には倫理観を無視し、法をやぶり、人を出し抜き、漁夫の利を得るが、それでも彼らは無法者にはならない。
なぜなら彼ら・彼女らは真に信頼できる仲間を持っているから。
ギリギリの所で人間であることをやめない。

迷宮に潜るのは死を望むようなもの。
でも、”死にたい” と望むのは、なによりも ”生きたい” から。

泥水を啜って、人の死肉を喰らって、それでも彼らは生を望む! 

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