衣服とは、原初の魔法である

 あたりまえのことですが、われわれ人間は服を着ます。
 理由はいろいろありますが、裸だと寒いし、恥ずかしいからです(稀に例外もいますが、だいたいにおいて彼らは警察当局に逮捕勾留されます)。

 でもなぜ、われわれは服を着ていないと落ち着かない気分になったり恥ずかしくなったりしてしまうのでしょうか。
 われわれは人であり、獣ではないからです。
 実は火を使う動物は人間以外にも(ごく稀に)いたりするのですが、衣服を着る動物というのは人間以外にはいまだ見つかっていません。
 ましてや、衣服を通して自己の嗜好や主義主張を表現することができるのは、われわれ人間以外には存在しません。
 つまり、服を着るか着ないかということは、人と獣を線引きするもののひとつであると言えるでしょう。

 本作『彼女が魔女に着替える時』(以下、カノ魔女)において、作者はそれを〝はじまりの魔法〟である、と定義しました。
 衣服を纏うことによって、人は獣ではなく人たりえるのだ、と。

 『カノ魔女』では、衣服は人と獣の線引きとしてだけでなく、実際に魔法の力を伴うもの――魔呪盛装《マギックドレス》――として描かれます。
 それらは作者の確かな知識と筆致によってきらびやかに描写され、読者を引き込むでしょう。
 主人公のひとりであるクロエとともに、「あんなドレスを、着てみたい」となること請け合いです。
(実際にぼくはドレスを着て街を練り歩き、警察当局に逮捕勾留されました。官憲の横暴を許すな)

 レビュー投稿時点で一章三話、『魔女のドレス、魔女の戦い』まで拝読いたしましたが、これから先、主人公であるソウジロウとクロエがどのような物語を文字通り織り成していくか、楽しみで仕方がありません。

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