いつもながらの華麗で重厚な物語

カクヨムでリスペクトしてる人は?
と聞かれたら、そこであげる人の中には必ず冬村さんがいる。それは物語にカラーがあるからだ。

小説を読むときに、自分の予想がつく世界、気軽に楽しめる世界、そういうタイプの話を好む人もいると思う。それはそれでいい。けれど、僕が読みたい作品はそういうものとはちょっと違って、予想がつかない、普段ちょっと考えないような世界を見せてくれるってほうだ。

冬村さんはそれを出してくれる。僕が知らないカラーを見せてくれる。それだけではなく、それは丁寧に形作られたミニアチュールのような職人の技だ。はなみやでも感じたけれど、カノ魔女で一層強くなった。

服飾という鮮やかな世界に魔法を添えた舞台。なんと魅力的な世界観か。それはマンガや映画では誰もがやりたがるかもしれないが、小説でも冬村さんの描写があれば手に取り目で見るかのように伝わってくる。

それ以外の部分もいい。キャラクターは半ば強制的に決められた男女ペアで最初は意識していないが、その二人がだんだん近づいていく。もちろんその中には競い合うライバルたちとの切磋琢磨、そして窮地を乗り越えていく展開がある。背景となる学校の経営陣たちにもひそかな伏線があり、油断できない。恋も成長も対決も事件も、どこを取っても刺激的だ。

まずは一章まで読み終えた。ここまででも十分にまとまった内容だが、その先へも引き込まれ続けられている。可憐な魔女たちのお誘いに逆らうのはちょっと難しそうだ。