第13話

靴下と靴をかごに入れると再び広斗を抱きかかえレジに向かった。

「あ、すいません。両方ともタグをはずしてください。」

レジの店員は広斗の足に視線を向けると

「はい、今お使いですね?空箱はどうします?」

と、にこやかに問いかけてきた。

「あ、そちらで処理してもらっていいですか?はいてきた靴を海で流されちゃって。」先ほどと同じ答えを返した。

「わかりました。えーはい、お会計は2560円になります。少々お待ちください。」

そう言いながら手際よくタグをはずしていく。

「良かったらそちらの椅子でどうぞ。」レジ横の椅子に広斗を座らせると靴下と靴を履かせる。たぶん経験はないが、なんとなくスムーズにできた。

「ありがとうざいましたー」店員の声を背中に受けながら今度は広斗の手を繋いで店を出た。そして再びフードコートに向かいなおす。広斗の手はプニプニしていた。子供の手ってみんなこうなのだろうか。それもよくわからん。

ただ広斗は相変わらずニコニコしている。こちらが怖くなるぐらいだ。

フードコートに入ると人はまばらだった。さて何を食うか?広斗は何を食えるのか?

だがそんな心配は不要だった。右手の上部の大きな看板をみると広斗は

「あーめん、あーめん」と連呼した。もちろんキリスト教の祈りではない。

ラーメンのことだ。いかにも好物のような嬉しそうな言い方だ。

「よし!広斗ラーメン食うか?」

「ん!あーめん!」これで決定だ。

手を繋いで店に向かう。

「はい、らっしゃい。」

「えーと、一番お勧めはなんですか?」

「んーと、爆弾チャーシュー麺かな?うちのは辛口じゃないから子供でも大丈夫だよ!」

「じゃあ、それと海老チャーハンで。」

「あいよ。1760万円!じゃあこれもっていってね。」お釣りと共に呼び出しベルを渡される。

横においてあった子供用の椅子をもって一番近くのテーブルに行く。壁の大きな装飾時計をみると時刻は15:30だ。まだまだ今日中にやれそうなことがありそうだ。

広斗を椅子に座らせ、自分は向かいに座った。

とりあえずやらなければならないようなこと、やれそうなことを行っているが未だに全く何もわかっていない。



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カニ @morokingz

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