蟻を踏む。

 人間の群は、蟻の群に似ている。人間の行列は、蟻の行列に似ている。
 強い日差しの中、主人公の男性は公園のベンチに座り、蟻の行列を見ていた。蟻たちはせっせと何かを運んでいた。不意に、主人公は蟻の行列の上に足を落とした。数匹の蟻が踏みつぶされる。生きているモノもあれば、死んだモノもあった。
 主人公の頭の中に残ったのは、死んだ方の蟻だった。生きていたモノの、ほんの数秒の生へのあがき。
 そして、家に帰った主人公は――。

 社会風刺と純文学の香りが強い一作。
 何かを見立てることが非常に巧く、そして見立ての感性が強い作者様の、衝撃作。

 是非、御一読下さい。