シムシティ

シムシティの前にまずロッピーの話をしなければならない。


ロッピーというのはローソンに置いてあるアレです。チケットの発券とかに使ったりする。今はそういうのもたいがい電子化されてるからあんまり触れる機会も無いかもしれないですが。


で、そのロッピーとシムシティがどう関係あるのかというと、昔ロッピーでスーファミソフトの書き換えというのができたのです。といってもすべてのソフトに対して出来たのではなくて、特別な、『素』の状態で売っているカセットというのがまずありました。そのカセットをローソンに持っていき、ロッピーで書き込みたゲームタイトルを選択し、ガチャリとソフトをセットして書き込み、代金をレジで払う。するとその選択したゲームがそのカセットで遊べるようになっているというものです。


このシステムのCMというのがあって、小学生三人組の『普通スリー』というのが出てくるんです。この普通スリーというのは、勉強も体育も何もかも普通なのだけれども、ただひとつ、ロッピーでソフトの書き換えができるのだ! という趣旨の歌が流れるCMでした。アラサーになった今でもなお普通スリーのことは記憶している。すごい。


で、このロッピーのやつ(正式名称は別にあったと思うのですが、我々はこれをロッピーと号していたのでそのままロッピーで続けます)で、はじめに買ったのがシムシティでした。なぜそのチョイスだったのかは忘れてしまった。


このシムシティは、荒野に街を拓いて巨大都市を目指そう! というゲームです。まず地形を選ぶ。海が多い地形は後々土地が不足しますが、港も建てたいのでなるべく海に面してかつ土地面積の広い場所を選ぶ。選んだ場所は荒野、あの西部劇のでかい枯れたマリモみたいなやつが転がってるくらいの荒野で、人工物はなにもありません。そこにまず発電所を建てる。電力を確保したら住居を建て、住居と発電所を電線でつなぐ(これをしないと人が入居しない)。人が来たら彼らの職場、外出先のために商業施設や工場を建設し、道路をひく。そうしていると徐々に人が増え、最初の『R』しか書いていなかった住居がだんだん二階建てになり、アパートになり、マンションになりと発展していく。


 ただこのゲームはバランスを取るのがむずかしくて、まず何かを建てるには金が必要なのです。で、その金は税収でしか得られない(プレイヤーは市長であるということになっている)。この税が高いと住民の不満の声があがり、転入者が減り、結果税収も減るという悪循環に陥るし、さりとて減税したからといって爆発的に転入者が増えるわけでもない。その上住民はしょっちゅう警察署を建てろだの消防署を建てろだの空気が汚れてるだの陳情してくるし、彼らの言い分を最大限に聞いても市長の支持率三十二パーセントとかですごいムカつきます。


 我々兄弟はまたこのゲームにハマり、交代交代で(まだ一人一日三十分の制限が存在していた)市を発展させていきました。最初のうちは不慣れで成長が鈍化してどうにもならなくなってしまったりしたのですが、繰り返すうちにだんだんコツが掴めてきました。そのコツとは、


・道路は一切ひかない。空気汚染や渋滞の原因になるので。代わりに線路をひく。(物流やばそう)

・発電所は原子力一択。たくさん発電できるし空気も汚染しないから。ちなみに補助金制度などはない

・市民の声は聞くな。やつらは言うことをころころ変える。こちらの都市計画にあちらを従わせろ

・火事が起きたら延焼する前に周りの建物を潰せ(火消し組みたいなことをしている)


等です。これらの知恵の蓄積により、我々はこれ以上建物を建てることができないほど発展した巨大都市を造り上げることができました。


しかしこのゲーム、そこまで行き着くとあとはすることが無くなってしまうのです。そうすると小学生は何をするか。おわかりですね。破壊しかありません。


このゲームには、おそらくこの時のための『飛行機を墜落させる』『地震を起こす』『ゴジラを呼ぶ』『原子力事故を起こす』というコマンドが存在していました。現在だと最後の一つはやや議論を呼ぶような気がしますが、九十年代当時、我々は毎日コツコツとつくりあげた都市に対し、メーデー!、大震災、原子力災害、ゴジラ襲来を同時多発的に発生させ、人口の激減していくさまを見てはゲラゲラ喜んでいたのでありました。


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スーファミのあとさき 鶴見トイ @mochimochi

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