軍人探偵

伊藤鷲津

第1話 水の集落、白臼村

前の仕事をやめてもう5年になるだろうか。それと引き換えにあの頃とは違い今は「現場」で働けているというやりがいはあるが、ドラマのような展開は無いのだと改めて知ることになった。つまるところ探偵という仕事は、非常に地味で地道なものであるのだ。今も依頼のあった浮気調査を遂行中の" 私"は、もうかれこれどのくらい経っただろうかとぼんやり考えながら調査対象をカフェの隅テーブルから監視していた。最近ようやく慣れてきたブラックコーヒーを啜ろうとした時、対象者が席を立ち店を出ていった。

ようやく動いたか。私もとっさに後を追う。

男はホテル街のほうへ向かっていきスマホを片手に辺りを見回しながら一軒の古びたホテルの前で立ち止まった。すると、どこからともなく一人の若い女性が現れ二人はそのまま中へ入っていった。「やはりそうか…。」至極当然の結果だ。この仕事についてからうすうす感じ始めていたが浮気調査とこれば大体浮気をしているものである。火のないところに煙はたたないものだ。私は現場を抑えた写真を依頼人に送り事務所に戻ることにした。

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