第24話 キャッチ・アンド・リリース

 俺は釣りが趣味なんだ。これほど面白いものはない。毎週休日には必ずいく。

 俺はこのところ、ナラ釣りにはまっている。ナラは硬くて食用には適さないが、黒ナラ、白ナラ、オレンジナラなどいろいろな個体がいて美しい。多少の知性もあるので釣る時の駆け引きが面白い。

 しかし、そのために釣った後に殺処分することは禁止されている。しかもキャッチアンドリリースするのだが、リリースは釣り場ではいけない決まりだ。遠くに放し場所を確保しなければならない。

 放し場は釣り場と我が家のちょうど三角形の一点にある。探すのにかなり苦労したが、獲物にも環境の良い美しい自然の中にあり満足している。

 ナラの釣り場は俺の住んでいるところからかなり遠い。

 俺はご機嫌なフィッシングボートを持っている。去年新しいものに変えたんだが、居住性といい、スピード感といい最高だ。俺は趣味には金を惜しまないタイプなんだ。その大型で高速のフィッシングボートでも片道半日はかかる。

 俺の職場は休日は毎週三日だ。半日かけて釣り場に行き釣り時間を調整して一日で終わらせ、次は半日かけて放し場に行く。放して我が家に帰ると残りの半日でSNSを楽しむ。

 先週末の釣りでは、オスメス合わせて13個体の釣果があった。一番大きいやつと一番美しいやつのナラ拓をとってSNSにアップした。大評判で、『やったね』の数が跳ね上がった。今までで一番の『やったね』だ。


 さて明日から休みだ。朝一でフィッシングボートを出すために、宇宙空港に申請を出す。すぐに66時30分の離陸許可が下りた。釣ったナラを入れる部屋を地球環境にセットし、食料と餌とその他必要なものを積み込んで準備完了だ。今晩はボートに泊まる。

 朝6時30分に宇宙空港を飛び立って30分後にワープに入った。4時間後にワープ空間から出ると太陽系の外れ、天王星の近くに出る。そこからは2時間も飛べば地球だ。

 計算通り地球の上空に着く。もちろん夜の側だ。ナラは賢いから昼間に姿は見せられない。

 お気に入りの釣り場、広い砂漠の中の一本道に仕掛けをかける。一台の、ノロノロ走る乗り物がくる。ナラは自動車といっている。すーっと仕掛けの中に吸い込まれて行った。やった。ナラはオスとメスの2個体だ。今夜はさい先がいい。仕掛けに入るとナラは麻酔で眠るようになっている。ナーラー2体を、乗り物から出して部屋に入れると乗り物は砂漠に捨てた。

 ところが、この夜は次の獲物がなかなか来ない。結局その後に釣れたのは3個体、オス1体、メス1体、子供のオス1体だった。

 全部で5個体は少ない。しかし、そう言うこともあるさ。先週は運が良すぎたんだ。

 朝が来る前に引き上げて天王星の近くまで来るとワープに入る。今度は方向をずらしていけすに向かう。また三時間ほどでワープ空間を出ると放し場の星のそばだ。地球型の惑星でまだ高等生物は生息していない。食用になる果物なども豊富だ。大型の凶暴な生物もいないので、ナラにとっては天国のようなものだ。

 まだ麻酔から覚めないナラ拓をとる。立体拓のマシーンにかければ美しい拓が取れる。今回は子供のナラがいるので、またまた『やったね』が期待できる。

 拓を取った後、ナラを外に下ろすとその場をさる。この惑星にはもう100個体ほどナラを放した。あちらこちらに分散して暮らしている。

 ナラは自分たちのことを人間と言っているが、最初に行った地方ではナラと行っていたので俺はそのまま使っている。

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短い短い お話 akari @akari341

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