犯人はあなた

@stdnt

第1話

「読者が犯人でない推理小説はない。                      読まなければ事件はおきないのだから。」 某作家の言葉より



   2050年、年の瀬


 やあ、久しぶり。冬の青森は冷えるのう。

あんたもついてないね。ただでさえこの物資不足の厳冬に青森とはね。

え、これかい? これは駅弁さ。もう冷えちゃったけどね。但し特上さ。

なんせ紙箱製だぜ。紙もどきだけどね。


 そういや、この間は本物の紙で色紙を作った馬鹿がいたらしいね。

その代償は四千の命だとさ。全くの馬鹿がいたもんだよ。

しかし寒いな。石油ストーブが懐かしいぜ。

おっと、こんなこといってたら馬鹿野郎と変わらないか。危ない危ない。


 え、なんだって、トイレに乗客の絞殺死体?おおごとじゃないか。警察には連絡したのかい?次の駅までは密室じゃないか。犯人は見つかったのかい。

 おいあんた、さっきトイレに行ってたけど、何もなかったのかい?ずいぶんと長かったようだけど。犯人とはちあわせしなくて何よりだったね。

 なんだって、乗客は二人だけだって?て、て、てことは・・・

 

 ところで君、まさかこの小説を本物の紙で印刷して読んでないだろうね。このご時勢じゃ人殺しになっちまうよ。

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