第7話 招待状
学園が出来てからは現在の生徒会室になっている。もっとも1階は文化祭や体育祭などでしか使わないものを置く倉庫になっているわけだが。
その生徒会棟の2階にある生徒会室で男女が睨み合っていた。いや、睨んでいるのは女子生徒の方で睨まれている男子生徒はドッカリと会長の椅子に座り素知らぬ顔をしているのだが…。
「
「ちょっと
兄と呼ばれた生徒会会長
「ちょっと二人とも落ち着いてよ!それに兄さん!彼は僕の友人なだけで【僕たち】とは関係ないんだ!」
「隼人、彼がここに来てから不可解なことが起きてるのは確かなんだよ。表面化されていないのは【成海の家】が手を尽くしたからだ。
とにかく、彼が要注意人物から外す理由は無い」
先日、学園の裏側にあった死体は事故として処理されていた。その時に逃亡したと思われる人物も解らずじまいな為、ツヴィンを疑っているのは決めうちに近いのは彼自身わかりきっている。
「来た時期と同じだからってだけで監視なんて横暴よ!
竜兄はなにもしないで!私たちは『普通の学園生活』を送りたいだけなんだから!」
女生徒の後ろに隠れて見えなかった小柄な男子生徒と会長職の青年の会話に不愉快丸出しで割って入る少女。言われた青年は先程までのふざけた空気をがらりと変え真顔で二人に告げる。
「どう思うかは二人の自由だ。だが忘れるな。俺たちは【他の者たち】とは違う事を。だからこそ…知られたら『こちらに引きずり込む』か『消す』しかないって事を」
言われた二人はうつむく。少年は寂しそうに、少女は悔しそうに。
青年は『話は終わりだ』と言うように手を振り二人を退出させる。
(やれやれ、事が起こる前にこちらから動くか。それに…【目】の数が減っている。潰された…とは考えづらいがそちらも調べる必要がありそうだしな)
…
…
…
カンッ!カンッ!と太い木の枝が叩かれる音が響く。裏山の奥、件の事故現場よりも深い森の中で二人の生徒が戦っていた。一人は木の枝を剣に見立てて、一人は素手で襲いかかっていた。
「まだ足運びがぎこちないぞ!そんなんじゃ回避が遅れる!」
ブンッ!!
生徒の枝が素早い横なぎからの一撃が決まる。受けた方は足をもつれさせて倒れた。
「な?そんなふうになるから足捌きは重要なんだよ。もっかいいけるか?」
「頼む!」
掛け声と共に再開する模擬戦は日が暮れるまで行われた。
…
…
「おい、大丈夫か?奈崎」
「やり過ぎちまったか…」と頭をかきながら言うツヴィンに「構わん」と短く答える奈崎大河。無表情に近い顔だがよく見ると満足げな瞳に対し「そうか」と答えた。
寮の廊下で「晩飯には間に合うよな?」という他愛ない話をしているとクラスメイトの
「よお
食堂とは逆方向に向かう友人に声をかけた。よく見れば顔色が悪く感じる。
「…あ、ツヴィン。なんか食欲わかなくてね…」
「そうか?…体調悪いなら医務室だっけか?付き合うが」
「…ありがとう。でも大丈夫だよ。奈崎君もじゃあね」
「…成海、無理はするなよ」
「うん。ありがとう」
くたびれた後ろ姿を見送る二人。いつも他人を気遣う友人の珍しい姿に自然と言葉を繋いだ。
「隼人のあんな姿、珍しいんじゃねえか?」
「俺は入学してから初めてだな。ただ不用意に踏み込むのもたばかれるな」
「…そうだな。誰しも『事情』があるからな」
もし家庭の事情なら、余計なお世話になりかねない。ましてや二人とも『特殊』の事情持ちである。
食事を済ませ部屋へと別れる二人。部屋へと入るところで違和感を感じた。
(ドアノブに仕掛けた魔術に反応?!)
壁を背にゆっくりとドアを開けた。反応は無い。ドアの隙間へ1枚のかざしフッと息を吹きかけると粒ほど細かくなり部屋へと舞う。それは
(…反応無しか。トラップの類いもなさそうだな)
ゆっくりと進むとテーブルの上にメッセージカードが1つ置かれていた。
『校舎裏の礼拝堂に来られたし』
今は無人の廃棄された教会だ。治安悪化の懸念から(過去に人が死ぬ事件があったとの噂)立ち入り禁止に指定されている場所だった。数年前に学園に買収されており取り壊して別の施設をたてる予定もあるといわれる場所だった。
「そんな辺鄙な場所へのご招待とはな」
ツヴィンの口が弧を描く。まるで獲物を見つけた肉食獣のように。
…
…
…
初めの違和感は【
(彼が来てから…ということは異能狩り?外にそんな勢力がいるとは聞いたこと無いが、自分達のような例もある。それに彼はパイプ役かもしれないな。ならば釣り上げてみるか)
豪奢な会長の椅子から立ち上がるのはこの部屋の主、生徒会会長
(あとはコレを彼の部屋に置いてと)
手元の【招待状】が事態を急速に加速させることを、彼はまだ気づかない。
……………………………
超スローペースで更新して参ります。
スロー過ぎて申し訳ありません
転校生は異世界ハンター タローラモ @Dinah
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