第6話 発見

「チッ!しつこい奴らだなぁ!」


 群れて襲い掛かるダガーウルフを斬撃&回避でしのいでいく。なんで学園の裏山でこんな事をしてるかというとこの魔物らが沸いてるのがこの山なのを突き止めたのが理由なのだが、詳しく探索する前に囲まれた。というのが真相だ。


(コイツらが大人しくなれば、ここで奈崎を鍛えるのにも使えるしなぁ)


 最後の一匹の首を撥ね飛ばす。周囲を警戒し奴らが来た方へと歩いていく。


(淀んだ魔力も感じねぇ。どうなってんだ?)


 むこうの世界を基準に考えるならば、魔物は淀んだ魔力を糧に生まれるとされる。淀んだ魔力とは死の瞬間に生まれる恨みや憎悪といった負の感情に干渉された魔力の事である。

 雑木林を抜けていくと、だだっ広い原っぱへと出てしまった。

 魔力が関係無いのであれば、原因とされるのは魔道具の類いだろう。目印としてほこら等があれば分かりやすいが、特に怪しいものは無い。


(埋まってるとか?だとするとめんどくせえぞ。あとは出てくるまで待つってのもあるが)


 転校したてで夜間に戻り!結果下手に目立つのは下策に思えたため、切り上げようかと思ったところで人の気配を感じた。

 とっさに木陰に隠れ気配を消すツヴィン。


(こんな所で何してんだ?)


 派手なシャツを着た男2人が、何か言い合いながら草原の中心に近づいていく。


「…だからってこんな場所に埋めるやつがあるか!」


「お、俺も知らなかったんですよぉ」


「ここら一帯は成海の縄張りだぞ!少しは考えろ!」



(…バカなのかな?)


 明らかにマトモではないだろう会話を大声張り上げて喋っている。隠す気があるのか無いのかよくわからないが…。

 男達が、ある一ヶ所で止まった。持っていたスコップで掘り出す。


(見えねぇなぁ)


 草原の草の高さは腰よりやや上まで延びている。ツヴィンは隠れている木が葉を充分に生やしているのを確認するとひとっ飛びで太い枝に手を掛けた。高さにして2m弱をだ。標的が気づいていないのを確認すると瞳に魔力を集中させる。


(俯瞰ふかんして見ねぇと感づかれるんだが、奴らを直視しなけりゃいけるだろ。バカそうだし)


 そう思った直後だ。掘り進んでいた男の一人が血を噴いて倒れた。


『ガァウォォォ!!』


「なんだコイツら!いきなり…ぎゃぁぁ!!」


 喉笛を噛みつかれ、おそらくは即死だろう男を地より涌き出たダガーウルフは貪り出した。


(あの中か!)


「『血よりも濃く流れ出でこの身を焦がせ

身体強化兵装アサルトスキン


流れるこの血よ風の如くこの身を流せ

身体速度強化アクセルブースト


流れ流れたどり着くは城壁のごとく

強化装甲スペルプロテクト

』」


 身体強化、感覚強化、肉体強度上昇の呪文を唱えると飛び出した。

 間合いを詰めると魔物の首を撥ね飛ばす。2匹、3匹と現れる度に切りつけ4匹目で打ち止めとなった。あとに残ったのは血溜まりに浸る死体の数々。


(この中に有るのか?最悪だな)


 有るとしたら掘り出された死体だろうと思い引きずり出すと内ポケットに魔力の波長を感じた。


(当たりだ!ついてるぜ)


 それは手のひらサイズの大きなメダル状の魔道具だ。中心に魔石が填まっている。


(魔石を囲ってるのは魔方陣。召還とは違う?まあいいか)


 依頼主ジイサンに手渡された紙袋に仕舞うと、丁度人の気配が近付いてきた。


(やべぇ)


 強化魔術が効いている間に離れることにした。



「やれやれ、人間の死体があるのは予想外だよ。…と、言いたいけどバケモノ相手なら人の死体も想定の範囲内…かな?」


 二人組の一人が後ろの黒服に声をかけた。


「ええ、こちらで調べてみま…おや?この二人は…」


「知ってる顔かい?」


 黒服は近づいて死体の1つの顔を見ると記憶を探ると!ああと手をたたく。


「こちらの二人は最近、本土から渡ってきた場怒組ばどぐみの構成員ですよ」


「…もとネタはBadから来たのかな?」


「は?」


「…こっちの話だよ。じゃあ一番汚れてるのは…」


 死体に触れないよう注意しながら死体を調べる黒服。


「…衣服の汚れ具合から、ここに埋められてたのでしょう。で、何らかの理由で掘り起こす必要があったと」


「…やれやれ。裏は裏でも『そっち』側は範囲外なんだけどね」


「ではこちらは我々で」


「頼むよ。と、本命の怪物の方だけど…綺麗な一太刀で切り飛ばされてるね。この死体に出来たと思う?」


 首なしの魔物の傷口は綺麗な断面をしていた。機械か何かで切り落とされたかのように。


「不可能でしょう。どう考えても」


「だよね。どう考えても彼らは弱そうだし、そもそもスコップで出来る切り口じゃないしね」


 黒服の前に立つと視線を先に移す。


「何より、ものすごい速度で逃げてった人物を特定する方が先かな」


 黒服を連れ、ツヴィンの逃げた先を見つめるのは


麻名鳳まなおおとり学園

生徒会会長成海 竜也なるみ たつやだった。






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