11. 少奄壮太政調会長
駒沢幹事長代行と飛来田政調会長代行は委員会出席などの関係でどうしても予定が合わせられなかったため、後日ご挨拶にお伺いするとして。
さて、次は侯爵議員の
「西村さん、ところで」
楽吉さんが小さく手を挙げるようにして言う。
私は歩きながら答えた。
「はい、何でしょう?」
「少奄先生ってセーチョー会長でしたよね?」
「ええ、そうですが。その口ぶりだと、『セーチョー会長? 何それ美味しいの?』とでも仰りそうですが」
「なんとなく聞いたことはありますよ? 政策をつくるとか?」
「大雑把に言えばそうですね。大きな会派・政党であれば政務調査会の中に農林部会・国防部会など政策内容ごとに部会がありまして、それらを取りまとめるのが所謂、政調会長ですね。まぁ、うちは小会派ですから部会はありませんが、会派全体の政策としてまとめ上げていく役割は同じですね」
「幹事長とか総務会長とだいたい同列ですか?」
「党・会派によって微妙ですが概ねそこに並ぶ『三役』です。うちでいうと、上から順に顧問、代表、総務会長、幹事長、政調会長でしょうか。ただ、党によっては首相・代表になるうえでの通り道だとも。まぁ、重役ですね」
「少奄政調会長は確か40代くらい、中川丈幹事長と同じくらいでしたっけ?」
「確か、中川幹事長のほうが少し年上だったかと思います。あと、議員歴でいうと中川幹事長は20年弱ありますが、少奄政調会長は3年ほどです。小会派だから、というのもありますが、少奄先生は侯爵議員ですから上役に就かれているところもありますね」
「と、いうとやっぱり貴族らしい貴族で、接し辛かったりする人ですか?」
「いえ、少奄政調会長は話しやすいですよ。それに大変、勉強熱心な方ですね。あ、そろそろ着きますよ?」
そう言って私は足を止めた。
「失礼いたします。左門飴也の孫の左門楽吉と、秘書の西村です」
部屋に入ると、少奄政調会長の他に黒田翔先生もいらっしゃった。
2人は何枚もの資料を囲うように向かい合わせに座っている。
「初めまして。左門飴也の孫の楽吉です。この度は... ...ってあ、翔さん?」
「おぉ、らっくん。久しぶりだね」
黒田先生が湯呑を片手に楽吉さんのほうへ微笑んだ。
さすがは国会王子。その場の空気が変わったようだ。
「お久しぶりです」
楽吉さんは国会王子に礼した。
「なるほどね。君が翔くんの幼馴染みの『らっくん』かな?」
少奄政調会長も負けないくらいのイケメンだ。
「はい。昔馴染みの友人からはそう呼ばれています。
少奄政調会長、よろしくお願い致します」
「あぁ、よろしくね。ちょうど今、副政調会長くんと選挙公約の素案をまとめていたところでね。立候補予定者くんも見ていくかい? まぁ、大西総務会長殿の修正が入るだろうけどね」
『副政調会長くん』とは黒田先生のことだ。
「あ、西村さん。今日はもうこの後の予定は?」
ここに留まりたい様子で、楽吉さんは私のほうを向いた。
今日お伺いできる同会派の議員さんはすべて回ったので予定は終了。
「はい。大丈夫ですよ」
「では、公約を、政策をお教えいただけますか?」
「ぜひとも。楽吉くんからも意見を聞いてみたいからね」
資料を手に持ち、少奄政調会長は楽吉さんに笑いかけた。
楽吉さんは嬉しそうに黒田さんの隣に座った。
服のよきように 結崎碧里 @AoriYuzaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。服のよきようにの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます