人に好かれてもその人を好きになるとは限りませんよね。逆に好きになっても、好かれるとは限らない。
お互いが好き同士でも「好き」と「好き」の質量に差があれば上手くいかないこともある。
そんな人を「好き」になることを恐れた小学生の男の子が、自分の恋をみつけ、そして自分でけじめをつけるお話です。
恋多きオンナ、恋多きオトコなら一つの恋にさっさと区切りをつけていけるのでしょうが、この主人公の舜介君の初恋はずっと彼を苦しめます。
自分が初めて好きになった年上の女性の幸せを願えるようになるまでの苦悩、まわりに傷つけられ、そしてまわりを傷つけながら大人になっていく様子。
青春の苦さを書かれた作品をどうぞご覧になって下さい。
現在進行形で心に傷を負う二人。
それぞれが直面している辛い現実は容赦がなく、先が見えないものでもあったけれど、お互いの信頼をより所として越えてゆく。
その先にあったものは――。
まさかの恋だった。
相手を大切に想う気持ちには変わりない、ただ、その想い方が少しずつ変化して。
大人になると、年齢差はあまり気にしなくなるものだけれど、子供のころは、それが決定的な一打になることがあって、時に残酷な表情を見せる。
丁寧かつ繊細、心の機微の鮮やかさに胸を打たれます。
不意に刺さる言葉たちに胸が熱くなり、掻き立てられた感情と心を揺さぶられたこの切なさは、やがて願いへ。
見どころは全部ですー!!!
少年が年上の女性に恋をして、少しずつ大人になっていく。
その過程をとても丁寧に描いている恋愛小説です。
主人公は、小学5年生の篠原舜介と、隣の家に住む高校生の森谷五十鈴。
2人は片親である者同士、学校でいじめられている者同士、いつも一緒に色々なことを過ごしています。ゲームをしたり、五十鈴が作ったごはんを食べたり。
舜介は「恋なんてしない」と思っているけれど、ある日、気づいてしまいます。自分が五十鈴に抱いている感情——それこそが「恋」である、ということに。
でも、五十鈴は自分を子供としか見てくれず、その関係は舜介が中学生、五十鈴が社会人になっても変わらない。舜介は急いで大人になろうとして、女の子と関係を持っていきます。その結果、恋によって傷つく人をまた増やしてしまう……。
この小説は、舜介と五十鈴の関係はもちろんですが、脇役たちがとても魅力的です。
私は特に、舜介には自分よりも好きな人がいることに気づきながら、体の関係を持っていく「宮原さん」というキャラクターに心惹かれました。
ぜひ読んでみてください。素晴らしい作品です。
作者さまの作品の特徴に、設定の上手さもさることながら、切り込むように色んな感情を胸に突き刺してくる心理描写があります。
今作もその特徴が活かされていまして、序盤から物語に引き込まれていきました。
ストーリーは、年上の女性を好きになってしまった小学生の男の子が、色々な関係を通して初恋を乗り越えていく内容です。
その過程には、様々な仕掛けが用意されていて、その都度揺れ動く世界に胸が苦しくなったり、涙したりと、初恋の不安定さを見事に表現されています。
年齢に合わせた軽いタッチの文体ですから、構えて読む必要はありません。抵抗なく頭に状況が流れ込んできますので、じっくりと感じることに専念することができます。
見所は、ずばり、ラスト直前に自分の気持ちに決着をつけようとするシーンです。中学生の不器用さ、不恰好さがそのままで、でも、一途な気持ちに完全にやられてしまいました!
初恋の想いに正直に向かい合った一人の男の子のストーリー、ぜひみなさまにオススメします。
青春モノの中で、切ない系が好きな方には特に刺さるのではないでしょうか!!