雨の龍は災厄か、救済か……歴史の転換期にぶつかり合う信念。

歴史に対する確かな見識を持つ、増黒豊先生が世に放つオリジナルファンタジー戦記。

その手腕は異世界においても如何なく発揮されています。
歴史とは、文化とは何たるかを知る先生が描く世界はここで描かれているストーリーを飛び越えて広大さを感じさせてくれます。

それを支えるのは、短く切れるような文章。
独特のリズム感がありながらもテンポが良くて読みやすい。それでいて世界観と深い知識が内包されていて、自分の奥底にくすぶる何かに火をつけるだけの魔性の魅力があります。

北方謙三作品が好きな方に、ストレートに刺さる作品だと思います。
そうでなくとも、ここまでひとつの『世界』を描くのに真摯で、ハードさと大河ロマンを併せ持つ傑作は稀ですので、読んで絶対に後悔はしません。