ウラガーン史記 墜星の滴

作者 増黒 豊

65

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★★★ Excellent!!!

歴史に対する確かな見識を持つ、増黒豊先生が世に放つオリジナルファンタジー戦記。

その手腕は異世界においても如何なく発揮されています。
歴史とは、文化とは何たるかを知る先生が描く世界はここで描かれているストーリーを飛び越えて広大さを感じさせてくれます。

それを支えるのは、短く切れるような文章。
独特のリズム感がありながらもテンポが良くて読みやすい。それでいて世界観と深い知識が内包されていて、自分の奥底にくすぶる何かに火をつけるだけの魔性の魅力があります。

北方謙三作品が好きな方に、ストレートに刺さる作品だと思います。
そうでなくとも、ここまでひとつの『世界』を描くのに真摯で、ハードさと大河ロマンを併せ持つ傑作は稀ですので、読んで絶対に後悔はしません。

★★★ Excellent!!!

腐敗し堕落した国家を砕き、新たな国を作る。言葉にすると簡単であり、また我々人類の歴史の中でも何度も起こったことです。

しかし悪とは何か?
正義とは何なのか?
正しき国とはどういったものであるのか?

答えに詰まる問いかけを、この作品は強く訴えかけてきます。いいえ、強いなどというレベルではありません。一つ一つの言葉が、重く深く痛いのです。

奪うことをせず生きられる世のために、奪わないために、自分達がその最後の一人になると決めた者達。
愛する者の瞳に映る自分がいつも笑顔である世を願い、己にしかできぬことを為す者達。
追い、求め、示す者達。
そして変わりゆく者、決して変わらない者。

この物語にモブはおりません。史記なのですから、全員が主人公です。
登場人物一人一人に心があり魂があり、正義があり生き様がある――その事実を、圧倒的な筆致と熱量で叩き付けられます。

悪の化身である龍、善の象徴である精霊、力を意味する盾、守るものを示した斧。
これらが一つに描かれた旗と世界は、現在十五章の段階でいまだ戦乱と動乱の激しい風に荒れ狂い、翻ってははためいてまだその形は未知です。

この風が凪いだ先には何が待ち受けているのか?
あの雨が止んだら、どんな世界が拓けるのか?
始まりの終わりを、必ずや見届けたいと思います。



☆ここでお得情報☆

今作は、前作でありながら史記の終章を描いた『ウラガーン史記目録』の開始一節部分となっています。

未読の方は、是非前作も読んでいただきたい!
読まずとも熱く燃えること間違いなしですが、前作を知っていると思わずニヤッとしてしまう嬉しいファンサービスがあるのです♡

前作を既読の方は、私のように喜びのあまり悶え転がって前作を読み返したくなる心憎い演出も一緒に楽しんでください(笑)

★★★ Excellent!!!

あるのでしょう、ただし私にはそれがない、書き表すことができない
それだけ、読む力がないのだろう

ただ、そんな私にも、なんとなく感じることはある

この物語、キャラクター同士の関係性、立ち振る舞い、どちらも鮮烈で、血煙を浴びても極彩色を放っている

しかし、それはこの物語のいわば支流で、見るものをおおもとへと誘うものだと思う

この魅力は、語られる国々の戦いや人の営みに目を向けるためのもの
この物語のおおもとを、私は歴史であると考えるが
魅力的なキャラクターでなりたつそれは、語られる前から。そこにあったかのように思えるほどに現実的だ

これこそが、この物語本流
それは、『最初から、何処かにあるモノを、キャラクターとともに、鮮烈に語る』
ことである、と

第十一章半ばにて、私はそう感じた

★★★ Excellent!!!

圧巻の筆力はそのままに、より深化して龍《ウラガーン》が帰って来た!

その武器のひとつは、筆者の持つ、知。
古代や中世、日本や世界中に伝わる伝承や歴史。ありとあらゆる処に仕舞われているであろうその知力を駆使しながら紡がれる物語は、まさに暴れる辞典。とはいえ、それはこの物語の一角に過ぎない。

もうひとつの武器は、心。
人の心を丹念に描く、氏ならではの筆致は、無骨にして流麗。硬く、決してするすると読みやすい文章ではない氏の綴る文字が、心に響き、そして滴のように墜ち、満ちる。
史記という物語の性質上、多くの人を扱う本作。魅力的な人物が数多く登場するが、その人物の心情を氏は独自の筆致で抉り込むように描いてゆく。

それは、さながら、満ちゆく歴史。

知と、人と、心。それらが複雑に絡み合い、国家と個人が明確に現れる時。そこには一匹の龍《ウラガーン》が貌を覗かせる。
その龍は、正か邪か。一言では言い表せない、長大な史記。是非、その眼に彼らの生き様を焼きつけて欲しい。