第2話 面倒なので、帰っていいですか②
あれから、数時間後。俺達は話を終えて帰ることになり、ヴェルサナス家別荘の門前に来ている。
すでに外は暗くなっており、綺麗な星や月が空の上にいた。
「それでは、明日から宜しくお願い致します」
「はい、分かりました」
「………」
チッ、あのクソ幼女め!サラより自分の方が可愛い、だと?そんなわけあるか。綺麗な白い肌に愛らしい丸目、バランスのよい美しい
覚えてろよ、大人気ないと言われようが絶対に仕返ししてくれるからな!
「リオ殿。どうかされたか?」
「リオさん。どうしました?」
ホルクとサラの二人が首を傾げて俺を見てくる。
「ん?どうもしねぇよ」
「そうですか?」
コラ、疑いの目を向けるな。ホントの事だ。
ワタシ、アヤシイコトカンガエテナーイ。
「ほら、早く帰るぞ」
「あ、はい!」
俺が急かすように言い先に歩き出すと、サラが慌てて返事をして後ろをついてくる。
そのさらに後ろに微笑みながら、ホルクが手を振って見送っていた。
***
二人が見えなくなり、屋敷に入ってふと思った。
「あれ?そう言えば、リオ殿の顔に見覚えが………。はて、何処こで見たのかな?」
私はしばらく頭を捻っていたが、結局思い出せなかったので、屋敷の者に聞いてみることにしたが、
「さぁ?分かりませんね」
「見間違えでは?」
「街を歩いたときに見かけたのでは?」
と、言った答えしか返ってはこなかった。
私は、結局「まぁ、その内思い出すだろう」と思い、思い出すのを止めて仕事に戻った。
***
俺とサラの二人は屋敷から少し歩いて東門の大通りに来ていた。
「じゃ、とりあえず飯にするか」
あのクソ幼女のせいで無駄に体力使ったからな。腹が減って仕方がねぇ。
「家には、帰らないのですか?」
まぁ、家でサラの手料理食べた方が美味しいし良いと思うけど………
「たまには、外で食べてみようか」
「むぅ………。分かりました」
あからさまに不満そうだなぁ。ここは、安心させる言葉でも掛けておくか。
「俺はサラの手料理が一番だからな」
「へ!?」
「サラの手料理大好きだからな」
「な、なな!?」
「サラのてryf「何言ってるんですか!」ゴフッ!」
鳩尾に右ストレート入りました!
え、何これ超痛い。朝の「たまに良いの入る連打パンチ」より威力あるよ。照れ隠しだとしても限度があるよ。
意識持ってかれかけたわ。
「す、すみません!大丈夫ですか?」
「あ、あぁ」
と、言いつつ痛みを和らげるために『
サラが涙目になってきちゃたよ。
「サラ、ほら大丈夫だぞ。なんともないなんともない」
「ホントですか?」
あぁ、もう最高!涙目の上目遣い超可愛い!この顔見ただけで怒りも痛みも消えたわ。
「ホントだよ」
「痛かったら、言ってください。私のせいですから、全力で治癒魔法を掛けます」
「分かったよ」
嬉しくて泣きそう。でも、掛けすぎると逆に疲労が溜まるから駄目だぞ。下手したら死ぬからな。慣れない内は、人にはやるなよ。
俺?俺の身体は特殊だから、平気だよ。
「それじゃ改めて。飯を食べに行きますか」
「はい!」
元気良いねぇ。
数分後、街の東門近くの宿屋兼酒場の〈青の竜亭〉にやって来た。中は、普通の酒場と変わらない内装だ。客の方は、満員とはいかないがそれなりに人が多く入っており賑わっている。
俺は近くにいた店員らしき女性に声をかけ席に案内してもらい、ついでに注文も受けてもらった。
「さて、料理が来るまで待ち時間、今日の依頼の内容を確認しとくか」
「………あれだけ嫌がってたのに、やけに積極的ですね」
「そうか?俺はやるからには、ちゃんとするぞ?」
てか、俺そんなに不真面目だと思われてた?ちょい辛い。
「そうみたいですね。分かりました、確認しましょう」
サラが同意したので、俺は頷き懐から依頼書を取り出そうとした。すると、横から露出の多い服を来た女性が話しかけてきた。
「ねぇ、お兄さん。私と遊びましょう?」
ア?…んだこいつ、ウゼェなぁ。
ほら、サラの機嫌が悪くなったじゃねぇか。どうしてくれんだ、ボケ。
「あいにく、連れがいる。他を当たってくれ」
「そんな事言わずにさぁ」
ベタベタ触るんじゃねぇ!化粧濃い、香水クセェなぁ!ったく、いつの時代もこういう娼婦は居るんだな。
大体好みじゃねぇ。
「だから、他を当たれ」
「ワタシは、あんたが良いんだよぉ」
「チッ、さわ」
あ、サラが立ち上がった!超怒ってません?ちょ、ちょっと待て!話せば分かる!
「リオさんから離れてください!」
って、あれ?怒ってんの俺じゃない?良かった、じゃない!危ないから止めさせねば!
「おい、や」
「ハ、小娘に関係ないでしょう?」
「関係あります!」
………無理ですわ。いや、怖すぎるわ。
え、何、二人の後ろに何か見えるんですけど。虎と兎が見えるんですけど。
てか、兎のサラ勝ち目ないじゃん!
そもそも身体がプルプル震えてるじゃねぇか!やめとけって!
「わ、私は………」
「なんだい?」
おいクソババァ、それ以上プレッシャーかけんじゃねぇ!サラを泣かしてみろ。
手足を端から少しずつ削り落として、傷口に塩をたっぷりと塗りつけそこを焼く。泣き叫ばれても困るから舌を切り焼き付けておいてやる。そしたら、熱した鉄板の上に置いてじっくり焼いてやるよ、ククク。
………って、あぶね!黒い思考に飲まれかけたわ。大体、こんなことしたらサラに嫌われるわ。ホント、危なかった。
「言いたいことがあるなら、さっさと喋りな!」
そんなプレッシャーかけたら、喋りたくても喋れないわ!
………やっぱり殺ってしまうか。
あれ、何だか周りに人が集まってね?もしかして、注目集めちゃったこれ?
いつの間にか三人のいるテーブルの周囲には、何事かと思った野次馬の客達が集まっていた。
俺が聞き耳をたてると、どうやら男の彼女が言い寄ってきた女に怒っていると思われているらしい。大体正解。
サラが彼女か。嬉しいけど、サラは弟子だしなぁ。
でも、ここで何か言っても駄目そうだし、静観してよう。ヘ、ヘタれじゃねぇし!空気を読んだだけだし!
「黙ってんじゃないよ!」
「テメェ、さっきからき」
「私は!私はリオさんの、いえリオの、妻です!」
「ブフッ!」
ちょ、なに言ってんの!?俺達そう言う関係じゃなくね!?
周りの人見て、ビックリして固まってるよ!
「へぇ…。じゃあ、小娘はこの男が好きなのかい?」
「はい!大好きです!」
えぇ、マジかよ。驚きと嬉しさが混じりすぎて、逆に落ち着いちゃったよ。
って、自分で言って赤くならないで。俺も赤くなっちゃうから。
「へぇ………」
ねぇ、なんなの?この街、こういったイベント見ると何で温かい目で見てくるの?そういう習性か何かなの?
「あんたはどうなんだい」
「俺?」
「そうだよ」
う~ん、そうだなぁ。確かにサラは可愛いし、嬉しいからなぁ。好きって言っとくか。と、浅はかかつ適当すぎる答えは置いといて。
真面目に考えるとするかね。
まず、俺はサラが俺のことを好きだという事は、だいぶ前から知っていた。いつからとかは、ひとまず忘れて。
サラが俺を好きでいてくれるのは、凄く嬉しい。それに、冗談抜きでサラを愛している。だけど、俺にはこの気持ちに答えることが出来ない。
まぁ、理由は昔にかけられた呪いのせいなんだけどね。内容はまた後と言うことで。
それにこの事は伝える事は出来ないし、とりあえずいつもの俺らしい答えでもしとくか。
「あ、あの、リオさん?」
「面倒なので、帰って良いですか?」
「ヘ?」
「は?」
「「はい?」」
うわ。皆、呆然としちゃったよ。
まぁ、そうだよね。はいもいいえも言わず、帰りたいって言ってるんだし。
………あ、今チャンスだ。今のうちに帰るか。
「………って、逃がすか!」
「オフッ!?」
あぁ、ヤベ、意識が遠く………。
「リ、リオさん!」
サラよ、泣くな。死んだりしねぇから。
てか、隣にいる娼婦のせいだからな。後で覚えとけよ、クソババァ……!
俺は、最後の力で腹パンしてきた娼婦を恨みを込めて睨み、そして意識を手放した。
最後にこう呟いて。
「せめて、質の良いベッドで寝かせてくれ………」
「「こいつ、バカだ!!」」
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