第4話 何か忘れてる気が………

「………は!」

ヤバい寝てた!やっと解呪した達成感で寝落ちしてしまった。

今何時………って夜じゃねぇか!

早くサラに会いに行かねば!


俺は大慌てで身支度をして家を飛び出す。

そして、樹海を走り抜けようと脚に力を入れたときふと思う。


あれ?何で俺走ろうとしてんの?


と………。

だって、『瞬間移動テレポート』があるもん。


「俺、どんだけテンパってんだよぉぉ!」

ってんだよぉんだよぉだよぉよぉぉ………


俺の叫びが森にこだました。

とりあえず俺はさっさと『瞬間移動』を無詠唱、サラのいる酒場の位置は分からないので、サラ本人に付けておいた目印マーカーで座標固定し魔法を発動する。

………何で、マーカーなんて物付いてるのかだって?何か遇ったときにすぐに迎え行けるじゃん。

どうもすいませんね、過保護で。


そんな事をしてる間に、俺は光に包まれサラの元に移動する。

そこは、


「………………わり」

「キャァァァァァッ!!??」


風呂場でした。サラさん、お風呂に入る所でした。

傷一つない綺麗で真っ白な肌に、これまた見惚れる程綺麗に整った胸。ウム、まるで一つの美しい彫刻の様だ。

いやぁ、眼福がんpu…って待てぇい!?確かにタイミング悪く来たのは悪いが、それは止めてくれ!

死ぬ、殲滅系は流石にしぬぅぅ!!

「ウオォウ!」

ここは逃げるが勝ちだ!

「『天地穿つ神雷の剛槍チェロイエアタランチャ』!」

「って逃げてどうする俺!『妨害する霧ジャミングファグ』!」


俺はそう叫んで、サラの発動しようとしていた俺オリジナル殲滅系魔法をどうクラスの阻害系魔法で阻止した。

て言うか阻止しないと、街が消えてた。危なかったわ。


はぁ………。まったく、この辺一体更地にする気か。

「な、何で、ここに居るんですか!?どうやってここに入ってきたんですか!?」

「あーえっとーですねー」

「―――ッハ!もしかして、私のに何かしてますね!」

「はい………」


俺は無意識に正座していた。調教されてんなぁ。

その後、俺は全てを洗いざらい話した。呪いの事はいつの間にか知っていたらしく話す手間が省け、ここに来た理由を話すだけで済んだ。

何故か話している途中から土下座していたが。

あ、そうそう全部サラが着替え終わってからだから!裸でお話してないからな!

正直残念ダケドネ。


「つまり私の身体には常に位置が分かる魔方陣が描かれていて、リオさんはそれを頼りに来たと」

「はい………」

おぉ、こえぇー。もう逃げ出したいんですけど。

でも、身体が動かないから出来ないよー。

何でだろうね、あははは………。クソォウ!

「言い訳はありますか?」

これは弁明のチャンス到来!ここで上手くやれば凌げるぞ。

「あ、ある……」

「無いんですね。分かりました」

あれー?おかしいぞー。弁明の余地すらないぞー。

いつものより倍怒ってんじゃん。

どうしてこうなった!

「それでは、罰を受けて貰いましょうか」

「なるべく優しくお願いします………」

くッ、どんなお仕置きだろうと耐えて見せる!

「フゥ………。では、行きます」

「お、おう?」

え、なんでサラが覚悟決めた感じになってんの?普通逆じゃね?

あ、おい、顔が近い近い。こんな近づいて何をすru………

「………………え?」

「ドドド、ドウディシュアカ?」

何故に言葉を覚えたての魔物みたいになってるんです?あと、噛んでるよ。

えーと、これってあれだよね。キスってやつですよね。基本的に交際している男女が唇と唇を重ねて行う愛情表現の一つのあれですよね。

「どうって、柔らかくて気持ちよかった。……って何言ってんだぁぁおれぇ!?」

普通に答えちゃったよ。

あぁもう、顔を真っ赤にして照れるサラは可愛いなぁ!多分俺も同じ状態だけどサ。

「そ、そうですか………」

「おい、喜んでないで説明プリーズ。どうしてそうしたのか分かるように説明を。いや、ご機嫌に鼻歌歌ってないで早く説め………話を聞けよ!」

「ハイ」

ウム、宜しい。

フッ、そして形勢逆転だな。ここからは俺のターン!

「んで、何でキスした」

「………な、何となく?」

何となくで俺は唇を奪われました。許せるかい?

俺は許せる!サラを愛してるからな。

うん。超ハジュカシィイ、穴があったら埋まりたい。

「顔が真っ赤ですよ!?熱でもあるんですか!」

「うん。いや、大丈夫」

「どっち!?」

おいおい、いつもの敬語はどうしたのよ?素が出てますよ。

「まぁ、それは置いといて」

「あ、ハイ」

「キスした理由も置いといて」

「それは置いてはいけないのでは?」

はは、聞こえないなぁ。無視無視。

「フゥ………」

「………?」

ヤベ、緊張してきたぞー。自分でこの空気創っておいてアレだけど、緊張で吐きそうだぞー。

取り敢えず深呼吸、深呼吸。

「フゥ………」

「あのお話は?」

「あぁ、今話すよ」

フゥ。よし、言うぞ!

こう言うのは勢いが大事だァ!

「………サラ。君の事が好きだ。大好き通り越して愛してる」

「ボファ!?」

おい、変な声出たぞ。

「だ、大丈夫……か?」

「は、はい………」

ヤベェ。サラが可愛い。いや、前々から可愛いと思ってたけど、何かいつもより何倍も可愛いんだが。超抱きしめたい、キスしたい、色々やりたい、……理性を保てねぇ。

「あの、リオさん」

「うん?」

「私も愛してますよ」

「―――ッンン!」

あーもう無理!なんだこの可愛い生き物は!

抱きしめていいよね?答えは聞いてないぜ!

「わ、わわわ!」

可愛いわー。腕の中で赤くなって慌ててるの超可愛い。

そういや、俺何しに来たんだっけ?まぁ、目的達成してる気がするから良いかぁ。

「アンタこんなとこで何してんだい!」

「ゴバァ!?」

この横腹を抉るような鋭き突き………。クソババァか!なんてタイミングで来やがる!

あ、また意識が遠くな……る………。

「人を駄目にする枕ァー」

「意味が分かんないこと言うんじゃないよ!って、あら気絶してる」

「リオさーん!?」


俺が目を覚ましたのは、それから数時間後の昼頃だった。


***


「………うーん、 オロ?何だろう、見たことある天井だなぁ」

そして、この状況、ごく最近にあった気が。

「おや?目を覚ましたかい。賢者様」

「ギャアァア!?ケバいィィiw」

「煩いわ!」

「ゴフォ!」

うおぉう………デジャビュー。

やっぱり痛いー。そして、若干慣れてきてるー。

「だ、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だサラ。何か殴られ過ぎて慣れてきた」

「それは大丈夫ではありませんよ」

うん、ダヨネ。いやでもね、マジで殴られ過ぎて感覚がマヒしてきてるから。今なら、切られても痛くないと思うよ。

やらんけど。

「それより、アンタらおめでとさん」

「「………………?」」

は?何か祝われることあったっけか?

「両思いになったんだろう?」

「「――――――ッ!!」」

何故それを!?

まぁでもいいや。隣のサラの可愛い反応見れたし。もうどうにでもなれー。

「賢者様は、何で投げやりになってんだい」

「色々疲れたからだよ。後、俺の事はリオだから、賢者とかじゃないから」

賢者?ダレノコトカナァ。ボクジャナイナ。

「あぁ、そうかい。そんな事より、サラちゃんが大変な事になってるけど」

そんな事よりってわりと酷いな。

「って、サラがなん………oh、気絶してる」

こういう弄られは慣れてないからなぁ。しゃあない、寝かせておくか。


俺はベッドから降りてサラをお姫様抱っこで抱えると、ベッドに寝かせた。

まったく、気持ち良さそうに寝やがって。


「さてと、話は下に降りてしようぜ」

「そうさね」


俺とこのBBA――名前はゼレと言うらしい――は、部屋を出ようとした時、ふと何か忘れてる気がした。


「あれ?そういや何か忘れてる気が………」

「どうかしたのかい」

んー、マジで何か忘れてるな。だいぶ大事な事だった気は、個人的にしないんだが街に来た理由………。




あ。





「仕事ぉぉぉ!!」

「な、なんだい。そんな大声出して、ビックリするだろ!」

それはすまん。だが、こっちも大事な事なんだよ!

あぁもうすっかり忘れてたよ!警護依頼今日からじゃねぇか!

「悪い、ゼレ。サラの事頼んだ!」

「おい、リオ!何処に行くんだい!」

「仕事だよ!詳しいことはサラに聞いてくれ!」


俺はキレ気味に答えると、高速展開・発動した『瞬間移動』で仕事場へ向かったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る