第1話 面倒なので、帰っていいですか①
数時間かけて街に来て、分かったことが一つだけある。
サラ、すげぇモテるわ。確かに、その辺の
でも、さっきから鼻を伸ばした男どもが話しかけてきやがる!あ、そこのお前、サラに触れんな!
………チッ。サラで変な妄想とかした奴がいたら絶対に、後で土に返してやるからな。もしくは塵も残さず燃やしてやる。
「サラ、ちょっとこっちこい」
「はい?どうしました?」
俺が手招きして呼ぶと、サラが小走りで近寄って来た。子犬みたいだなぁ、と思いつつ近くに来たサラを強く抱き寄せ周りにいた男どもを睨みつける。
腕の中のサラは、恥ずかしさと嬉しさで頬を染めてあわてふためく。
「へ、あ、あの!?」
はい、ちょっと耳塞ぎますねー。
「――!?リ、リオさん、何も聞こえないんですが!?」
それはそうだよ。『
さてさて、それじゃ虫除けしますか。
「散れ。こいつは俺の物だ」
恐ろしく低い声で、俺は的確に群がる男達に威圧するように魔力を放つ。それを受けた男達は、一瞬身体を強張らせ固まったが、すぐに蜘蛛の子を散らすように走り去っていった。
後に残ったのは目を回すサラと冷やかす野次馬であった。
フハハハ!これでサラに悪い虫はもう付くまい。まぁ、また近寄ってきたら今度は塵一つ残さんがな!
俺よりまともなら、考えなくもない。え?そんな奴ら一杯いるって?じゃ、俺より強いやつで。
「は!リ、リオさん!」
「どうした?って、あぁ
ごめんごめん。何も聞こえないのは、怖いよね。
「あ、やっと聞こえた!って、それよりリオさん、男性の方々がいきなり走り去っていったのですが、何をなされたんですか!」
ち、近い、顔が近いよサラ!?あと少しでぶつかるよ、サラさん!?
「サラ、顔がち、近い………」
「へ?あ、えっと、すいません!!」
俺にピッタリくっついてる事に、気付き顔をサラは真っ赤になった。釣られて俺も赤くなっていく。
サラは慌てて少し離れる。周囲の野次馬達は、それを見てニヤニヤと笑みを浮かべていた。
お前ら、これは見世物じゃねぇぞ!その付き合いたての初々しいカップルを見るような目を止めろ!止めろって!
「あの、私の質問の答えてくれてくれないんですか………?」
「あ、そうだったな!えっと、あれだ。サラを守るためだ」
わぁ、我ながら凄い恥ずかしくて雑な答えをしてしまった。
絶対この答えじゃ駄目な気がする……
「ウフフ、守るため………」
あれ?何か満足そうにしてますね。それどころか、若干嬉しそうにしてるよな。
…おいこら、野次馬ども!だから、その目を止めろ!ぶっ飛ばすぞ!
「分かりました!それなら仕方ありませんね!」
えっと、何が?って、悪い虫を追い払ったことか。いやはや、良かったわー、許してもらえて。
………野次馬ども、そろそろ止めないとさっきより強めの威圧しちゃうぞ☆
てか、もう絶対やるからな、全員覚えておけ!
「それじゃ、早く行きましょう?」
ご機嫌なサラが、俺の手をぎゅっと握る。
指を絡ませ、まるで恋人同士のように。
ちょっとぉう!?サラさん大胆ですよ、そういうのはちゃんと好きな人とやりなさい!
まぁ、やってたらやってたで、相手の男はこの世から消えるがなぁ!フハハハ!
「どうかしました?」
「え?いやいや、全然大丈夫OK安心したまえ」
「全然大丈夫そうに見えませんが………」
ヤベ、動揺してるのバレるわ、これ。
えぇい、こうなればヤケクソじゃあ!!
「大丈夫だから、早く行こう!」
「へぇ!?」
俺は、サラを引っ張って歩き出した。
困惑した表情のサラは、力強く引っ張ったためたたらを踏んでいたが、しっかり後ろをついてきた。
俺は去っていくついでに、ニヤニヤ笑う野次馬どもに強めに、威圧しておいた。
はい。野次馬さん達、全員意識不明状態になりました。フハハ、ドンマイ。
「あの、リオさん!」
「どうした、サラ?」
「あの、場所分かってますか!」
あ。
「分からん」
俺は、はっとした表情で立ち止まった。サラも、背中にぶつかりそうになりつつ止まる。
ちなみに手はまだ繋いでるよ。そろそろ離しとこう。
離したら、サラがちょっと不服そうにしました。何かごめんね。
「分からないのに、走ってたんですか」
呆れたような声で、サラは俺をじとっーとした目で見る。
うん、ごめん。でも、動揺してましたし、仕方ないよね。
「でも、運が良いのか。目的地の近くまで来てますよ」
「マジか!」
「大マジです♪」
あぁ、もう可愛いなぁ。超抱きしめたい。
嫌われたくないからしないけどな!
え、少し前に抱きしめているって?
あれは………
無かったと言うことで。
「よし、ならこのまま行こうぜ」
「はい。でも、先頭は私が歩きますね」
「なんで?」
「場所、分かりませんよね?」
あ、そうでした。
……oh、お怒り時の笑顔ですね。
ここは逆らう事をしない方がいいね。
「すまんサラ、任せた」
「はい、任されました。それでは、改めて行きましょうか」
「あぁ」
そう言って俺達が、並んで歩き始めようとしたら、
「待ちたまえ!」
路地裏から全身金色の甲冑男が現れた。
俺は、とりあえず吹き飛ばすことにしました。
「『
「デバフッ!?」
右腕を金色甲冑男に向けて唱えると、手のひらに魔方陣が展開されそこから巨大な風の渦、竜巻が前方に放出される。竜巻は、金色甲冑男を巻き込み、そのまま雲一つない青空の彼方へと消えていった。
「たーまーやー」
あ、これ、
まぁ、良いか。
「ちょっ、なにしてるんですかー!?」
「お空にfryして貰っただけダヨ?」
別に全身金色がウザかった訳では、ないよ?ホントだよ、ホントだからな!?
「意味が、分かりません!!」
「えー。知り合いじゃ無さそうだし、別に良いじゃないか」
「そう言うことではっ!………はぁ。リオさんの天衣無縫ぷりは、初めて会ったときからですし、もう良いです」
「おいおい誉めるなよ」
誉めても何も出ねぇよ?
「誉めてませんから。ほら、また絡まれる前に行きましょう?」
「おいサラ、それフラグ………」
俺がそう言いかけたとき、また路地裏から今度は上半身裸の変態が現れた。
「フヘヘヘ、みつげだどおらNoy…」
「
「プラム!?」
しかし、二秒で俺の手によってお空へ飛んでいく。
いやー、今日は良く人が空を飛ぶね。
「………あれは仕方ありませんね」
「そうだろ」
だって、変態だもの。退治して良かったよね。
「とりあえず、先を急ぎましょうか」
「あぁ、ホント早く行こう」
俺達は、疲れた表情で街道を歩くのだった。
***
「ここか。目的地のヴェルサナス家か」
うへぇー。超デケェ、この街一番じゃね?
確実に俺の家よりデカイわ。
というか、塀がデカイ、そして長い、中見えない。
「それじゃあ中に入りましょうか」
「え、許可とかは?」
「すでに取ってます」
サラさん仕事が速いよ、ホント。さすが、俺の弟子。
「じゃ、入るか」
「そうですね」
鉄製の門を開けて、俺達は中に入る。
門の向こうは、綺麗な花が咲き誇る庭園が広がっていた。
「綺麗………」
「そうだな」
感嘆の声を上げ、俺とサラは庭園を眺める。俺達は庭園を堪能しながら、真ん中の石造りの道を通り抜け屋敷の扉の前までやって来た。
サラが扉をノックする。
「依頼を受けたサラとリオです。誰か居ますか」
すると、扉が開き、白髪の老執事が出てきた。
老執事は一礼して言う。
「お待ちしておりました。サラ様、リオ様、どうぞ中へお入り下さい」
「はい。分かりました」
「お邪魔しまーす」
うおー。中も豪華!これで別荘かよ。マジ貴族の屋敷って色んな意味でおかしいわ。
って、痛い痛い!?ちょっ、つねらないでサラさん!
「こちらの方になります」
案内してくれる老執事の後ろをついていくと、二階の応接室らしい部屋へと来る。
「では、こちらでお待ち下さい」
そう言って老執事は一礼し部屋を出ていった。
俺は隣に立つサラに言う。
「ま、とりあえず座るか」
「はい」
俺達は、同時に部屋に置かれたソファに座る。
え、何このソファ!?超柔らかい、座り心地最高じゃん!
「これ、良いですね」
「あぁ、家に一つ欲しい」
サラも気に入ったみたいだな。でも、高そうだな、これ。
引きこもりの俺に果たして買えるのか。
「では、依頼達成の報酬の一つとして、差し上げますよ」
そう言ったのは、部屋に入ってきた茶髪の青年だった。
俺は眉をひそめて、中に入ってきた青年を見る。
「あんた誰だ?」
「これは失礼。私は今回依頼した主、ホルク・ヴェルサナスです。どうぞお見知りおきを」
ホルクと言った青年は恭しく頭を下げ、礼をした。
俺は依頼主と知り一応警戒を解く。
「そうか。俺は、リオ。こっちは、弟子のサラだ」
「よろしくお願いいたします」
「えぇ、よろしく致します」
「それで、依頼の詳細は?」
はよ、話せ。そして、サラから離れろ。
ぶっ飛ばすぞ。
「分かりました。そうですね簡潔に言えば、一週間ほどこの屋敷で私の妹、ララを守っていただきたい」
「貴方の妹であれば、騎士団にでも頼めば良いだろう?」
だって貴族の護衛は、基本的に騎士団の仕事だろう?
まず、ギルドに依頼するような事じゃない。
「それは、無理です」
「何故?」
「我が家が、騎士団と対立しているからですよ。そのため、護衛は頼めず、さらには命まで狙われてしまってます」
マジかよ。騎士団って言ったらこの国の正義の象徴みたいなもんだぞ。それが、敵になるって何したんだよ。
てか、騎士団も騎士団で物騒だな!
「たく、何したらそうなるんだよ」
「それは、私が聞きたいぐらいだよ…。父は何も話してはくれないので、分からないのです」
「あっそ、なら良いや。それで、護衛対象はどこに」
「今、こちらに来てますよ」
ホルクがそう言うのと同時に、扉が勢いよく開き一人の少女が入ってきた。
少女は気の強そうな顔つきに、ホルクと同じ茶色の長髪をポニーテールにしている。
「お兄様、彼らが私の護衛ですか?」
「あぁ、そうだよ」
「ふーん」
こいつが、ララとか言う奴か。何かめんどくさそうな感じだな。
「貴方、名は?」
「リオだ」
「そう、幸の薄そうな名前ね」
あ?こいつ失礼だな。
「そっちの貴女は?」
「サラです」
「まぁまぁね」
あの、こいつ殺って良いですかね?ダメ?
………チッ。
言っとくが、サラはお前の百倍可愛いわ、ボケ!ちょっと、スレンダーなだけだから!
「お兄様、この人たちあまり強そうに見えないのだけれど」
「安心しなさい。私の目には、狂いはない。見た目はともかく、彼らは十分に強いよ」
「そうですか。なら、安心です」
二人とも、ぶっ飛ばそうか?
魔力の貯蔵は、十分だぞ。
「お、落ち着いて下さい。リオさん」
「あぁ、大丈夫だ」
そうだ、落ち着け俺。相手はガキだぞ?ここは大人としてのた………
「おい、ボロ雑巾」
「殺す」
誰がボロ雑巾だぁ?これか、このコートか?ボロボロじゃねえわ!汚れてるだけだわ!
「リオさん、落ち着いて!」
「ララ何いってるんだ!失礼だぞ」
サラが俺を止めに入り、ホルクはララを注意をする。
しかし、その時のホルクの一言が余計だった。
「確かにボロ雑巾だが、そう言うことは心の中で言いなさい」
ん、喧嘩売ってるな?買ってやろうじゃないか!
「お前ら、表でろや。シバいてやる」
「だから、リオさん落ち着いてください!」
「フ、まるで獣ね」
「ララも煽るな!」
いや、お前も無意識に失礼な事を言ってるけどね?
しばらく、俺とララの口喧嘩は続いて沈静化させるのに、サラとホルクに要らぬ疲労を蓄積させることになるのだった。
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