キャラだけじゃない、作者自身が調べて作り上げた空と風と人の物語

飛行機や舞台設定、世界は何故そうなっているのか、そう言った要素を世界観と表現しますよね。
フィクションには多くの要素を一本の糸として、撚り合わせて長く丈夫な縄になっています。
この縄が、多分世界観。
その辺の説明は他のレビュアー様や本編中を読み進めれば、たとえ最初は少し難しいと感じたとしても優しく理解できると思います。

ですので、ちょっと別角度から、ごく当たり前の事を書きたいと思いました。

主人公の女性は年齢相応の悩みを持っています。
「自分はどんな大人になりたいのか」
思春期の悩みを彼女はどう答えを出して行くのかが、本作の読みどころではないかと考えます。
作中に出てくる人物達は、人が誰でも一度は抱える悩みについて、何某かの考えを持っています。
若者は悩みとどう向き合うべきか、この答えはその人の人生それぞれによって異なり、誰もが安易に結論を出すことはできません。
例えどんな人生のベテランだって、紆余曲折、山も谷も乗り越えて、だけどまぁこんなモンで良いのかなぁ位の事しか言えませんよね。
皆さん、そりゃ、当たり前だと思われるでしょう。

しかし、この「若者は悩みとどう向かい合うか」を小説として書くのは、結構難しいと思うのです。
何故かと言えば、
「どうにかして台詞で表現しようとする」
ので、少し薄っぺらくなってしまうからです。
でもでも、若者の本音ってどんなでしょう?
何か具体的な言葉でしょうか?
それとも曖昧な思考実験とか?
何事も簡単に断言する老獪な大人の悲観的なアドバイス?

もし、台詞ではなく行動でそれを示すことが出来れば、若者らしい情熱、つまり、

「ええい! なんて言えばいいかわかんないけど、自分はこうしたいんだ!」

が表現出来るんじゃないかと思うのですよ。
ね?

本作では、主人公を囲む何もかもが優しく作り込まれています。
その優しさを、主人公はひねくれる事なく受け取ります。
読んでて、そりゃもう、一緒にステラ(登場人物みんなに愛されてる主人公の愛機、飛行機の名前ですよ)で甲斐の山と空を飛んでる気持ちになれるくらい。

厳しく優しい人達と自然に囲まれて、ちょっとポヤポヤしてそうで実はその中に芯のある主人公が、悩みについてどの様に答えを出すのか、読者としてもドキドキしながら優しい気持ちで読み進められます。

えー、当たり前じゃんそんなの、と思った方、その当たり前が案外無いんですって!
読後感が少し優しい気持ちになれるかと思います。
主人公と一緒にステラに乗って、若者らしい悩みを、前に進むチカラに変えてみては?

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