神は細部とお話にも宿っている

  • ★★★ Excellent!!!

「神は細部に宿る」と言うが、細部のディテールがしっかりしている割に、お話はうーん・・・という作品自体は結構多い。自分の知らないジャンルの専門用語を並べられた上、それが話の本筋に絡んでない作品は作者の自己満足なのではないかと思うことも多々ある。

飛行機が絡んでくるこの作品も、そんなヒコーキマニアの自己満足に陥っているのではないかと身構える人も多いかもしれない。だが、読み進めていくうちに、「これは違う・・・」と感触を得る。歴史的背景、地理的要因、飛行機の特性。これらが話に上手く絡み合って進み、主人公はそれらに翻弄されつつも乗り越えていく。

飛行機とその操縦のディテールもさることながら、舞台となる山梨の地理がよく反映されていることも分かるはずだ。当然それは飛行機の運行に影響をもたらす。完全な創作世界ベースだとイメージが難しいこともあるが、実在地域ベースだとGoogleMapを見れば、「あ、そういうことか」と理解できる楽しみもある。そもそも、こういう楽しみを読者に行わせる時点で、作品に力がある証拠だろう。

余談だが、やたら飛行機の用語(それも分からない)が登場するが、とにかく面白くて、分からなくてもどうにでもなる小説と言えば、秋山瑞人『イリヤの空 UFOの夏』があったが、あれも山梨が舞台の作品だったなあ。山梨にはなにかあるんだろうか。

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