上下二部構成となっております。
上巻は戦国時代の美姫お市の方が現代にタイムスリップをしてきます。そこで出会ったのはヴァンパイア。彼もまた、十二世紀からタイムスリップしてきた男。
時も場所も違う二人が、本来出会うはずのない時間と場所で運命の出会いを果たす。
そして、運命の歯車は動き出します。
上巻は、二人の愛が育まれる様子が、ある事件と共に描かれます。二つの視点を効果的に使うことにより、ミステリアスな雰囲気のまま、ゆっくりと謎が解き明かされていきます。
しかし、最大の謎はそのままで、あることから下巻へと続きます。
下巻は一変して戦国時代。
記憶を失ったお市の方とそれを見守る男が一人。そして、お市の方は史実通りに三人の娘を産み育てます。
ですが、二人の数奇な運命はそれだけで済むはずがありません。
お市の方は、浅井長政に嫁ぐ前に身ごもっていた。
物語は、今も続いています。
さあ、皆様も一緒に読み進めましょう。二人の愛はどうなるのか。
人とヴァンパイアとの間に育まれた愛は、様々な障害を越えることが出来るのか!
皆さまが、この物語の語り部とならんことを。
タイムスリップしたお市の方が現代日本でヴァンパイアに出会う――。
このあらすじを読んだとき、ひょっとしたら不安に思う人がいるかもしれません。
「何だそれは、思いつきで書いてないだろうな?」
しかしご安心ください。この物語は、設定こそエキセントリックではありますが、エンターテインメントとしてはしっかりと創り込まれています。人目を惹くアイデアどまりではなく、読者を最大限に愉しませる工夫が張り巡らされているのです。
特に注目したいのは、ヒロインがお市の方であるという設定がきちんと生かされているというところですね。しかも、読者の興味と不安、切ない恋心を揺れ動かせるという点において。
ヴァンパイアという概念すら知らない彼女が出会ったのは、なぜか昼間は姿を見せない蒼い瞳の美青年。現代に生きる我々読者は、彼の正体について簡単に納得できますが、お市の方はそうではありません。ましてや彼女は、タイムスリップという概念さえ知らないのです。自分がやって来たこの国はどこなのか?
そして、自分の周りで起きている謎の吸血事件の真相は――?
幾重にも張り巡らされた伏線と謎解き、意外な展開、忍び寄る不安、吸血鬼・ジョエルの甘いささやき、それらが巧みに絡まり合い、本作を熱くとも甘い恋愛物語に留まらず、読む手を止めさせないエンターテインメントとして完成させています。
戦国美女の筆頭、織田信長の妹、市姫。
歴史上では政略結婚に翻弄された悲劇の美姫。
彼女が……現代で……ヴァンパイアと恋愛!?
なるほど、これは形を変えた斬新な異世界転移もの?
ヴァンパイアはやっぱりこうでないと!
……これ以上はネタバレになってしまうので、書けないのが残念です。
ちなみに、歴史についてはさりげない説明が自然にされているので、市姫のことを全く知らなくても楽しめると思います。
一話一話が短く、読みやすいです。
ストレスなく、物語を楽しむことができます。
ヴァンパイアといえば、タイトルは、運命を示しているのか?
次第に不穏になってきた日常。
先の展開に期待しています。
半ばまで読了です。
覇王・信長の実妹イチと吸血鬼ジョエル。彼女がタイムスリップに巻き込まれて現代日本に流され、ジョエルと出会って惹かれていくというというのが骨子になっています。
限りある人と時間に限りのない吸血鬼。2人の抱える価値観や苦悩が丁寧に描かれており、特に現代に来たばかりで様々なものに戸惑うイチの反応は読んでいて新鮮です。一方でイチへ世話を焼いているうちに惹かれていきながらも彼女を同族にしたくないジョエルの苦悩もまた物語に深みを与えています。
しかし、その前に立ちはだかるのは当事者たちの苦悩ばかりではなく得体のしれない悪意もまた潜んでいます。分かたれる2人の運命は何処へたどり着くのか…。
後半も楽しみです!!!