会津編

第43話 会津の女たち

「僕らが生き残る為に、幕府側にも銃を売りましょう」

鉄之助は、翌日4人を前にこれからの方策を伝えた。

「京はアブねえからな。東国に戻って、しばらく安全に暮らそうぜ」

美星はいう。

「アタシの店も気になるし、いいわね」

ロザリーも頷いた。

「京都の味もいいが、もうそろそろ関東の味がほしくなってきたしね」

お珠も頷く。

「販路拡大か……悪くあるまい」

パーカーもにやついていた


2

「そうどすか。さびしなるなぁ」

東春は鉄之助と面会し、困ったように云った。

「京都ではお世話になりました。なにか困ったことがあれば、品川居留区へ文を。力になりますので」

「あんたら、しっかり鉄はんを守るんやで。ええな?」

「ああ」

「任せてくんな」

(守って貰うのは、未だに慣れないな)

東春と女同士で鉄之助を守ることを誓っっていたが、鉄之助は守らせるつもりにはなれなかった。


3

会津藩は、古風な考え方が大半を占めるこの時代でも、珍しい藩だった。

「成らぬものはなりませぬ」

什の掟を小さな頃から叩き込まれて彼女たちは育てられる。

同じ町に住む六歳から九歳までの藩士の女子たちは、十人前後で集まりをつくる。

この集まりのことを会津藩では「什 (じゅう)」と呼び、そのうちの年長者が什長となる。

毎日順番に、什の仲間のいずれかの家に集まり「お話」を一つひとつみんなに申し聞かせ、すべてのお話が終わると、昨日から今日にかけて「お話」に背いた者がいなかったかどうかの反省会を行った。


一、年長者の言ふことに背いてはなりませぬ

一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ

一、嘘言(うそ)を言ふことはなりませぬ

一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ

一、弱い者をいぢめてはなりませぬ

一、戸外で物を食べてはなりませぬ

一、戸外で男性と言葉を交へてはなりませぬ

ならぬことはならぬものです


結果、みな元服を迎える頃には

頑固な女に育ってしまうのだ。


「頭がかてぇなぁ…………」

美星は旅籠で、ぼやきを漏らした。

「買い食いもダメ、男と話すのもダメか。江戸とは全然ちげぇ。男への対応が違いすぎる。町人まで侍みたいな面してやがんの」

「だから会津女は、頭も行動がカッチンカッチンなのね」

会津の宿場の一つで、鉄之助たちは頭を抱えていた。

何かを売ろうとしても、鉄之助とパーカーは女性と口を聞いて貰えない。しかし、相手は男に興味があるため、表情は上気して赤くなる。

女の興味が無いわけではないようだった。

その証拠に

「…………兄つぁま めんごいなぁ(兄ちゃんかわいいなぁ)」

「戸外で男性と言葉を交へてはなんねど」

二人連れのうち一人の女性は、鉄之助に話そうとしたが、もう一人が止めた。

「あのーどうかしました?」

鉄之助が問いかけるが、相手の二人は会釈だけをしてその場を去ってしまった。

これが誰に対しても同じ反応が帰ってきた。

「どうすれば売れるんでしょうね」

会津藩のマーケット規模は大きい。しかし客層が問題である。

「男と話してはいけませんかぁ…………お珠さんたちから売って貰うってのはダメですかね?」

「アタシらは用心棒だよ?」

「愛想も良いし、仲良くするの得意じゃないですか」

「まぁ人並みにはできるよ。でもさぁ、商売の知識はねぇし」

「僕とパーカーさん、ロザリーさんだって教えられますよ。ここに商会の支店を作って、お珠さん、美星さんで運営しましょうよ」

男として、行動が制限されるのであれば、他の手段がいるだろう。

「ヤクザなんかいないもんですかね」

会津を本拠地とする博徒などがいれば話をして見るのもありかもしれない。

「マフィアか……いいかもしれないわ」

「任侠かぁ……危険だぜ」

「危険なのは、我慢するしかないです。任侠と繋がってる町人はいないんでしょうか」

「なんでだい?」

「内通者ですよ。侍はダメでも下級武士なら、規律に辟易してるものがいてもおかしくない。全員が教えを守ってるとは言えないとおもうんですよ」

鉄之助は予想した。

きっと、規律を守る温度差はあるんだと。







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男少女多の世界で。 ヒポポタマス @w8a15kts

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