羅生門の鬼

門とは元来より境界を表す。
あちらとこちら。内と外。

内より旅立つものはこれからの激動と希望を。
外より帰り着く者は懐かしの安心と平穏を。

この門に願って通り過ぎる。

そうであるのならばである。
この門にこそ、人々の信仰や精神の拠り所とし、神社仏閣に勝るとも劣らない崇高さや純然さが備わって然るべきなのだと。

と私は思う。

この門に託される人々の思いはそれぞれで。
明日への希望や昨日への絶望。

もう少し具体的に述べるとすれば、

この京で数々の蛮行を働き、門外への追放を迫られた無法者の無念も。
長い長い出稼ぎの末に家族のもとへと戻った父親の安堵であろうとも。

この門は分け隔てなく迎えて送り出す。
その数々の思念を少しづつ、その木体に宿しながら。

ともすればである。

それを餌と…続きを読む