とある海辺の村、左慈は不眠に悩まされて夜な夜なさまよっているところ、不思議な女に出会う。
夜の逢瀬を重ねるうちにひかれあう二人。
けれどもそれはあまりにひとときの安らぎ。決して交われぬ二人の結末とは。
改稿版二周目。
以前に読んだときより一層胸苦しく、追い詰められていく左慈の気持ちが伝わって胸が痛いです。
昔の日本にはプライバシーの概念がなかったと聞きますが、共同体の中でどうしても馴染み切れない人、無理をし続けている人の居場所はどこだったのかなと思っていたので、この作品はそれを描いてくれている気がしました。
狭い村や家の中で居心地悪い思いをしている左慈ですが、決して家族や村人から虐げられているわけではありません。
親切も過干渉も心配も真綿で絞められていくように左慈を苦しめていきます。
その彼が救いを求めたさきの結末。どうしても乞い願わなければいられなかった存在。
淡々とした静かな文章ながら、どんどん転がり落ちていく。
胸ぐるしい話ですが、夢中になってしまう。
とても面白いです。ぜひ、この結末を見届けてほしいです。