第6話
「先輩」
昼飯時になった。
俺と南は何時もの通り、南が持ってきた弁当を食って居たのだが。
諸星がやって来た。
何だ?
「諸星?どうした?」
「やだな。先輩の彼女として来たんですよ」
諸星はその様に言って。
飼い主にめちゃめちゃに甘える子猫の様に。
擦り寄って来た。
俺は赤面する。
それに、これによって教室の中が凍り付いたし。
面倒臭っ!
思っていると。
南が怒りの声を上げた。
「.....ちょっと。さゆゆ。あんた.....止めて」
「はい?.....何でですか?私、先輩の彼女ですから。指図される意味が分からないです」
諸星も真顔で対抗する。
それから、話を切って俺に擦り寄って来た。
胸まで押し付けてくる。
俺はため息を吐いてから。
そんな諸星を引き剥がして話す。
「あのな諸星。恥ずかしいから勘弁してくれ」
少し冷たげに告げた。
だが、諸星は。
全く気にせず、擦り寄って来る。
「えー?だって付き合っているんだからいいじゃ無いですか」
「.....」
様子を見ていた南が。
ため息交じりで不愉快そうに、ご馳走様!
と大声で話して。
その場を去って行った。
俺はその南の様子に。
我慢が出来なくなった。
諸星は気にせずに絡んで来るが。
「諸星。.....すまん。離れてくれ」
「嫌です。私、透先輩の事が.....」
このクソ野郎。
俺は堪忍袋の尾が切れた。
そして睨み付ける。
「場も弁え無い奴は彼女とかじゃねぇ!」
怒りの声が出て。
教室の騒がしさが止む。
ボッチの俺が声を上げたからだろう。
諸星を静かに確認する。
そんな諸星は。
涙を流して、複雑な顔付きで居た。
「何で.....?何でそんな事を言うんですか?透先輩.....」
「いや.....お前のせいだぞ」
まさか諸星がこんな事で泣くとは思ってなかった為。
俺は困惑に困惑した。
諸星は涙をぽろぽろ零しながら。
俯いて、呟いた。
「私.....助けてくれたのが嬉しくて.....なのに.....」
「.....」
教室中の人間は。
アイツ、最低だな。
そんな軽蔑の眼差しを向けて来る。
俺はそんな目線と。
諸星を見て。
目を逸らした。
☆
諸星さゆゆ、は。
俺に対して全く接触して来なくなった。
アイツが悪いとは言え。
言い過ぎたか?
その様に思いながら、複雑な思いで。
俺と南は帰路につく。
「.....じゃあね」
「ああ.....」
俺は口角を上げて、手を振って南を見送る。
そして自宅まで数メートルの距離を。
重い足で歩く。
でも、これで良かった。
その様にも感じられた気がした。
思っていると。
ドンッ
「イテッ!?」
いきなり。
何かが衝突して来た感じに。
襲われた。
俺は痛みが起きた背後を見る。
そこには。
「.....イッタ.....ちょっと!どこ歩いてるの!馬鹿兄貴!」
「.....はるか.....」
俺はそんなはるかを複雑に見つめる。
ヘアピンで前髪を止めている為、気が付かなかった。
するとはるかは。
胸の前で腕を交差して。
ブツブツと文句を赤面で話した。
「ってか、辛気臭い顔して歩くなっつの!.....ああ!もしかしてまだあの事を!最低!外道!クソ馬鹿!3回死ね!」
「いや、違うぞ!ってか、此処は外だぞ!?言うなよ!」
そんな、会話をしながら、お互いに帰宅する。
すると、途中ではるかが。
俺に対して、腕を組んでからツンデレさんの様にそっぽを見て。
言葉を発した。
「あとさ!悩みあるの!?有るなら早く話してよね!マジウザいし、家も辛気臭くなるし!」
「.....はるか.....?」
まさかのはるかの言葉に。
俺は口角を上げた。
そうだ。
はるかも年頃の、しかも諸星と同じ学年。
と言う事は。
対処法を知っているかも知れない。
俺は真剣な顔付きになる。
これに対して、はるかは驚愕する。
それは後回しだ。
俺は、聞く。
「.....はるか。悩みを聞いてくれ」
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