第2話

「.....ハァ.....」


「いや、馬鹿なんじゃ無いの?透」


俺の地元の高校。

県立山口高校のクラスにて。

目の前。

他人の席だが平然と腰掛けている様な友人兼幼馴染の山地南に、その様に言われた。歯の長さ的に隠し切れない、右から伸びている八重歯が特徴的な。

外で運動をしている為、健康的な感じで日焼けをしている。

短い黒髪の上に赤のリボンが有る様な、ソフトボール部の女の子。

なんて言うか。

全てに失敗して、ボッチの俺にとって。

気軽に話せる奴ってコイツしか居なくてだ。

とっても、かなc。


「うん。まぁ、とにかく俺は穴があったら入りたい。某アニメの雪歩の様に」


「うん。そのネタ分かりづらいよ。って言うか、はるかちゃんってとっても繊細だよ?それ以前に女の子って砂糖菓子の様にとても繊細なのに」


男子の様に。

足を椅子の上で組んで座る、南。

健康的な太もも、って言うか。

パンツを隠す為のズボンがスカートから丸見えだ。

それを見て、俺は盛大なため息をついて話す。


「.....まぁ、少なくとも太ももを、ズボンを平然と露出するお前よりかは確かに、はるかは女の子らしいな」


「.....ーーーーー!!!!?」


バチコーン!!!!!


まさかのグー。

俺を殴り飛ばしてから。

バッとスカートを下ろして。

俺に対して赤面で睨んだ。

そして、俺の首元を握りしめてグラグラ揺らしながら俺に叫ぶ。


「お主!観覧料寄越せぇ!!!!!」


「ちょ。まっ!?アホかテメェ!少しぐらい拝ませてもらっても良いじゃねーか!減るもんじゃねーだろ!!!!!」


「良くない!乙女の太ももを見るなんて百億年早いぞ!透ぅ!!!!!」


大暴れだ。

周りの連中が何事かと俺達を見てきている。

すると教室の扉が開いた。


ガラガラ


「ホームルーム始めるぞー。.....何やってんだ?」


「先生。見て分かるかと思いますが、ただの制裁です」


何が制裁か!

俺の首を馬鹿力でプロレス技を使い締め上げる、南。

筋力馬鹿に絞められて!

イヤァ!死ぬぅ!



キーンコーンカーンコーン


「.....ようやっと昼か.....」


全くね。

この世の全ては勉強と言わんばかりの時間割だ。

毎日がこんなんだよ。

何?俺達を勉学で抹殺したいの?

こんなんで死にたくねぇよ?

良い加減にしろよ。

全く。


チョンチョン


「透。昼飯。作ってきたから一緒に食べよ」


トントンと教科書、ノートを整えている俺の背後から。

日焼けた顔に笑みで白い八重歯を見せる、南。

俺は机から起き上がって、2つの可愛らしい弁当袋を見た。

こいつ、男勝りな感じなのに。

毎回見るけど、キ●ララ好きだな本当に。


「.....つーか、また作ってきたのか。お前、ソフトボールの練習忙しいんだろ?.....もういいって言ってるのに」


「.....うん。だけど、これは日課の様なものだから。大丈夫だよ」


昼飯時で騒がしい教室内で。

椅子と机を引っ張ってきて俺の机にくっ付ける南。

俺もそれを手伝った。

それから俺達は弁当を広げる。


「そういや、お前の大会まであと何日だっけ?」


「んー?今週の土曜日だよ」


そうか。

今週の土曜か。

応援に行かないとな。

幼馴染の大切な晴れ舞台だから。


「.....また、応援に行くからな。南」


「うーん。女の子の太ももを見る様な変態さんは来たらダメー」


腕でバッテン印という姿で。

舌を出す、南。

ちょ。いやいや!

嘘だろう!


「いやいや!もう許して!マジで!?ってか、俺の唯一の無二の大切な趣味を奪わないで!」


「あっはっは!冗談、冗談だよ」


南は。

俺に対して大笑いする。

そんな南に。

俺はマジで焦っていた。

いや、本当に。

だって、趣味を奪われたら泣くだろ。

誰だって人間は。



可愛らしい、シ●モン型の海苔を使ってデコレートされた様な弁当を食って。

ダラダラしながら午後の授業を聞いていると。

全てが終わった。

俺達は静かに帰路に着く。


「.....くそ〜。自宅に帰るなんて.....胃が痛い.....」


「本当にアホだね透。なんで事後を考えないの?」


「うるせえよ.....」


今日は珍しく。

南のソフトボール部は休みの様だった。

何時もより早い時間での南の帰宅。

俺達は河川敷の夕焼けを受けながら。

歩いた。


「.....」


「.....ね、透。夕焼け、綺麗だと思わない?」


「.....ああ」


河川にキラキラ映る、太陽の光。

俺達はそれを静かに見る。

すると、南が和かに話しかけてきた。


「.....透」


「.....何だ?」


「.....私、貴方にどう見える?」


何を聞いているのだ。

コイツがどう見えるか?

そんなもん、直ぐに分かる。

幼馴染で、暴力的で、相談役で。

俺にとって側に居てくれないと死んじゃう。

そんな感じの女の子だ。


「.....お前は幼馴染として俺にとっては居てくれないと、とても困る存在だよ」


「.....うん。そっか。.....そうだよね」


嬉しそうに納得する様な。

それから複雑そうな感じを見せた、南。

その姿に俺は首を捻った。

だが、それを見ないで駆け出して行く南。

それから振り返って。

俺に八重歯を見せて、はにかんだ。


「.....これからも宜しくね」


「.....全く意味が分からん」


俺はその様子に。

クエスチョンマークを浮かべる。

なんでそんな事を聞くのか。

本当に分からない。





























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