第7話

俺の為にカーテンを開けてくれた明るいリビング。

そんなリビングのソファに腰掛けて、俺は俯いて床を見ていた。

そうしていると。

はるかは紅茶を淹れてくれた。

そして、はるかは俺の横に腰掛ける。


「全く。面倒臭い。早く話してよね。時間無いんだから」


「.....サンキュ」


紅茶はストレートだったが。

問題無く飲める濃さに仕上がっていた。

その紅茶がカップの半分ぐらいになった時。

俺は意を決して言った。


「なぁ。女の子を泣かせたら.....どうしたらいいと思う?」


「.....は?兄貴、女の子泣かせたの?最低!外道!」


いやいや、コイツ。

悩みを聞いてくれるんじゃねーのかよ。

俺に対して滅茶苦茶に悪態吐いてるじゃん。

思いながら、はるか、を見る。

するとそんな、はるか、はそっぽを向いて言った。


「.....どうしたら良いかなんて決まってる。女の子に対してなら、謝る。命を賭けて謝る!傷付いてしまったならそれって大切だと思うから。」


「そうだよな。やっぱ」


俺は、はるか、の言葉に納得する。

すると、ふふっ。

と、はるかは含み笑いをして。

俺に向いて来た。


「うん。やっと笑ったじゃん。笑って、気力を取り戻して、謝るのは大切。女の子は男の子の感情も気にするんだから!」


「.....はるか.....お前.....」


「.....この全てを生かすか殺すかもあんた次第。とにかく今は、謝るのが大切だと思うよ」


俺は呆然と、はるか、を見つめる。

はるかはその様に話してから。

紅茶を飲み干して。

そして、鞄を持って。

俺に対して、口角を上げた。


「.....でも、生かす事は兄貴なら出来るよ。私は兄貴を今まで見てきたんだからね」


まさかの言葉だった。

俺は言葉に。

笑みを浮かべた。


「有難うな。だいぶ励まされたよ。はるか」


「別に?辛気臭い兄貴がイラつくから、提案しただけなんだけど」


その様なツンデレ感満載で。

栗毛色の髪の毛をなびかせて。

リビングから去って行く、はるか。

そうだ。

今、俺がするべき事は。

諸星を泣かしてしまった事を謝るべきだ。


「諸星.....」


俺は呟いた。

紅茶のカップを片付けて。

そして、無理やり交換した様な諸星の電話番号に連絡をして。

明日、会おうと約束しようとした。

だが。


『お掛けになられた番号は現在、電波の届かない.....』


「?」


その様な留守録になってしまい。

俺は録音になり始める、スマホ画面を見つめながら。

考えこんだ。



「諸星さん?.....今日は来てないっすよ」


「.....分かった。有難う」


2階に有る、1年のクラス。

その辺りをくまなく捜索した結果。

そんな答えが返ってきた。

俺は困惑する。


「昨日の何回も掛けて繋がらない電話といい。何だかおかしいな」


俺は顎に手を添えて。

ため息交じりで歩き出す。

すると、背後から女の子の声がした。


「あの、すいません。もしかして、ゆーちゃんを探して居るのですか?」


唐突に。

その様な声がした。

振り返る。

黒髪のポニテ。

更に、黒縁の眼鏡に。

泣き黒子が有り。

本を持っている、あまりにも諸星とはかけ離れた女の子が居た。

俺はクエスチョンマークを浮かべる。

諸星の事を知ってんのか?


「.....諸星の居場所、知って居るのか?」


「はい。多分、今の時間はバイトしてます」


いやいやいや。

ちょい待ち。

学校途中でそれはマズイんじゃ。

ってか、バイト?

その様に思っていると。

女の子は首を振った。


「あの子だけ.....この学校では特例が認められてますから.....」


「.....どう言う事だ?」


俺は真剣な顔付きで居ると。

俺の耳に口を近付けて。

女の子は話した。

ちょ。

俺は赤面しながら、慌てるが。

次の言葉で。

冷静になった。


「先輩だけに話しますね。ゆーちゃんは.....ご両親を航空機事故で亡くして、兄弟を養いながら暮らしています」


その言葉は。

俺の母親を思い出す、辛い言葉に聞こえ。

体に衝撃が迸った。






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