第5話

「.....ハァ.....」


「♪」


何故こうなるんだ?

普段、その容姿と性格と言い全くリア充とは言えない俺。

そんな俺が、だ。

諸星という女の子に腕を組まれている。

何?この学校で諸星ってそんなに人気あるの?

シセンガムチャクチャイタインダケド?

引っ張られる様に歩いて無理矢理、俺は登校してから。

このザマである。

ってか、諸星、君の胸が俺の腕に当たっています。

困るんですけど。

どうすんの。

これ。


「.....ってか!お前、今まで俺の元に来なかったのに.....本当に突然だな!」


「いやいや、先輩の事を探していたんです!それでようやく、この前見つけて.....あ、そうだ。先輩。彼女とか.....居ます?」


「それを聞いてどうするんだ!」


勿論、先輩と私が付き合うんです!

と、言ってから。

大きく手を叩く諸星。

馬鹿なの?

こんな光景を南、はるかに見られたらマジでどうなるんだ?

軽蔑されるわ!

軽くじゃ済まないぐらいに!

早くコイツを引っぺがさ無いと。

思いつつ、俺は引っぺがそうと苦戦しつつ。

階段を登る。

あ。


「.....」


「.....あ」


教室までの階段を登って行くと。

練習終わって俺を待っていたのか、南が登った先に居た。

マズイ!

これは絶対にマズイ!

何でこうなる!


「.....えと、透?その子.....何」


パキン.....。


なんか。

空気が凍る様な音がした。

今まで俺を睨んで居た、周りも引いている。

いや、超能力なんて有る訳が無いので。

感覚だけど。

マジで有るんですね。

空気が凍るなんて事が!


「.....い.....いや。南。あのな。話を聞け。コイツはな、諸星っていう奴でな。説明をするとだな.....」


「初めまして!私、透先輩の彼女の諸星さゆゆって言います!以後、宜しくです!」


何を言ってんだ。

BAKAYAROUめが。

俺はその様に頭に思った。

爆弾が投下されちまったんじゃ.....。

俺は青ざめて目の前を見る。

その場には。

まるでメデゥーサが立っている様だった。

俺は固まる。

南のこんな姿は見た事が無い。

死ぬ!

南はこういうのは大嫌いなんだ!


「えっと。はるかちゃんの電話番号はっと.....」


「ハァア!!!!!」


やめい!

はるかに伝えんな!

軽蔑の眼差しでマジで殺されるわ!

芋ずる式に親父にも多分、殺される!

マジで全員から処刑される!

俺が、今度こそ終わる!

慌てふためきながら思っていると。

諸星が怒った様な感じで。

一歩、踏み出した。


「えっと、何ですか?先輩?透先輩のお知り合いですか?何でそんなに透先輩が困る様な事をするんですか?.....あ、もしかして.....透先輩の彼女ですか?」


「なっ!!!!?.....そんな訳無い!透の事なんか.....これっぽっちも.....!」


「だったら邪魔しないで下さい。私達の関係を、です」


嬉しそうに。

俺の腕にまた、自らの腕を絡ませてくる諸星。

その様子を。

涙目で南は見ていた。

震えている。


「え」


俺は驚愕する。

と思った瞬間に。

方向転換して。

南は一気に駆け出して行く。

荷物を捨てて、だ。

俺はその様子を見てから。


「.....諸星。すまん。用事が出来た」


「え」


今の南は。

いつもと感じが違う気がした。

俺は諸星を突き放して、直ぐにダッシュで追い掛ける。

そして廊下を突っ走る。

しかし、南は速い!

見失いそうだ。

危ない!



屋上。

くそう。

結局、見失って。

人に聞いてから屋上に来ちまった。

居るよな?南。

俺は息を吸ったり吐いたりして。

目の前を見る。

其処には南が居た。

遠くを見ている様な、南が。

良かった。


「.....えっと、その.....諸星の件はすまない。だけど.....なんかよく分からんが、お前の態度もどうかと思うんだが.....」


俺は息を整えてから。

その様に話す。

すると。


「透は.....」


「.....?」


その言葉を言ってから。

振り返った、南。

俺は。

有り得ない光景を目にする事になる。

あの男勝りで。

涙なんか決して流さない、南が。


「.....お前.....」


「透は.....付き合わないよね?あんな女の子と.....」


「.....は?」


涙を流していたのだ。

俺は心底、驚愕の表情で。

南を見る。


「もし、あんな女の子と付き合い始めたら.....私、透を軽蔑する。そんな軽い奴だったんだって。透は絶対にそんな人間じゃないって知っているけど.....でも、とっても不安なんだ」


「.....」


その必死の言葉に。

俺は横を見て。

そして真正面に向いて。

言った。


「.....諸星と付き合う気なんてさらさら無い。それにお前との関係をぶち壊すぐらいなら。死んだ方がマシだ」


俺は。

拳を握りしめ。

その様に断言した。

幼馴染が泣いて訴えているのに。

この場でNOと答えたらアホだろ。

思っていると。

南が安心した様に和かに言った。


「.....うん.....有難う。.....そうだよね。大丈夫だよね。透だもん。私が一番好きな、透だから」


「.....え?」


まさかの言葉に。

俺は再び驚愕する。

何秒か経って。

南はボッと。

火が付くように赤面した。

それから南は大きく慌てふためく。


「いや、あの!違う!違うから!透の性格が好きって事だから!勘違いしない!」


「お、おう!」


俺は構えのポーズを取った。

これに対して南はビシッと指を突き立てていた。

その時。


キーンコーンカーンコーン


予鈴が鳴った。

これに対して、南と俺は。

びっくりする。


「あっと。ヤベェ!担任に叱られちまう!行くぞ!南!」


「あ.....」


俺は直ぐに。

南の手を握って。

駆け出した。

その際に何か、聞こえた気がしたが。

振り返っている暇は無いと思い。

そのままであった。

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