第5話 森の先の国
さて、ティアの武器も買ったことだし、あとは軽く食料を買い込んだら、この街ともオサラバだな。
しかし、この先どこへ行こうか。
となると、一つ行って見たいところがあった。それは、この街の目の前、巨大な森林地帯を抜けた先にある古代都市『ドルミーネ』である。
この街は特殊で、元々は巨大国家があったのだが、衰退して人々はいなくなった。そして残った廃墟を見つけた冒険者や旅人たちがそこを冒険の休憩所にした。
それがきっかけでその場所に多くの冒険者たちが集まるようになり今は、冒険者の冒険者による冒険者のための街、と言うか集落のようになっている。
もちろんそこにいるのは殆ど一流の冒険者だ。なぜならドルミーネに行くにはこの魔物が住む森林地帯を行き来できる者でないと行けないからだ。
それともう一つ理由がある。
「ティア、次はあの森を抜けた先にあるドルミーネへ行こうと思うんだが。どうだ?」
「いいんじゃないかしら」
「ついでにティアの実力も知りたいからな」
「あぁ、そう言うこのと。構わないわ。あそこにいる魔物程度、他に比べれば大した問題じゃないわ。それよりも私はこの森を抜けれるのかの方が心配なのだけれど」
と、ティアは頭を抱えて唸った。どう言う事なのだろうか。やはりティアでも、この森を抜けるのは難しいと言う事だろうか。
「ティア、やっぱり森を抜けるのは簡単じゃないのか?」
「そりゃ当たり前でしょ。冒険者たちがドルミーネに行くのに一体どれだけの人手と時間と手間と食料とを掛けているとおもっているの?並みの冒険者でも十人編成で一週間は掛かると言われているわ」
「!?そんなに掛かるのかよ。それは知らなかったぞ」
「そもそもあの森にいる魔物なんてほんと少数。魔物に出会う確率より、森を抜けれずにそのまま死ぬ確率の方が圧倒的に高いわ」
「..............どうするティア、ドルミーネ行くか?」
「はぁ、行くに決まってるでしょ。全く、貴方から言い出しておいて、頼りない主人ね。早く一週間たたないかしら」
「やめて怖い!」
旅を始めて早々、俺は最初の難所に出会ったのだった。
□
ドルミーネに行きたい理由はまだある。冒険者しかいないその街は、そこでしか手に入らない貴重なものが、他の街の比にならないほど多く存在している。
しかしながら、いくら理由が沢山あったとしても................
「この森を抜けるのは、相当の労力がかかりそうだ」
「だからさっきも言ったじゃない。いくら私が強さに自信があると言っても、この森に野宿する覚悟は必要よ。いや、確実に二日以上はかかるわ。耐えれるかしら?元貴族さん」
と、ティアがニヤリと笑う。だが、俺もこの度に向けて相当の覚悟をしたつもりだ。ぶっちゃけティアを買う瞬間が一番覚悟がいったんだがな。それに比べればマシだ。
しかし、いざ森の入り口に立つと圧倒される。しかもここから先は魔物がいる。ティアが言うには魔物にはそう簡単に遭遇しないらしいが、油断は出来ない。
「さ、行くわよアラック」
ティアは元気よく森に飛び出した。彼女は平気なのだろう。
□
あれから結構歩いた。足場が悪く何度も転けかけた。だが、やはりゴールは見える気配がない。この同じ景色が永遠に続くような気がするほどだった。
しかし、気づけばもう日が沈みかけていた。信じられないほど時間が速く過ぎてしまった。
「ティア、日が暮れそうだな」
「そうね。今日はこれくらいにしましょう。元々、一日で抜けれる気なんて一切無かったしね」
「で、どうするんだ?ここで野宿か?」
「そうしたいのだけれど、参ったわね。他の冒険者よりも私が優れ過ぎていたからちょっとペースが速かったわ。本来なら魔法で魔物が入ってこない『安全地帯』で休むのがこの森の基本。しかしここの近くにそれらしいスポットが見当たらないわ」
「え......?じゃあ、どうするんだ?」
「私も正直迷ってるわ。一日てここまで進むと思っていなかったから」
俺たちは立ち止まって頭を抱えていた。
その時、近くの草がガサッと揺れる音がした。
「.....誰だ!」
俺はとっさに振り返った。魔物が近くにいるのかと思ったが、そこにいたのは人だった。よく見ると、長い赤髪の美しい少女だった。
「あまり嬉しくないけど、助かったわね」
と、突然ティアが言った。
「どう言うことだティア?」
「魔女よ。この森に住んでいる物好き」
「はぁー、酷い言われようね!」
赤髪の少女がそう言いながら駆け寄ってきた。
ティアがまたため息を吐いた。
「あまり魔女に貸しを作りたくないのだけれど、ここで野宿をしても死ぬし、仕方ないわね。アラック、彼女に匿ってもらいましょう」
どうやらこの森には魔女が住んでいるようだ。
この奴隷少女は俺の手に負えない エテレイン @decode_cannon
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