僕と彼女のデットフラグ
ネコモドキ
第1話 私、このテストが終わったらdeadに行きます。
「
下校途中、彼女である
昔、少しヤンチャしていた過去をも受けてくれた香織に、僕は頭が上がらないし、なによりこんな僕を好きだと言ってくれた。本当、僕には勿体無い彼女だ。
「なに、香織」
だからと言って、誰にも譲る気はさらさら無いのだが。
「私、ふと思ったんです」
「うん、何を?」
西日を背中に浴びて、後光が射したかと見間違う程可憐に微笑む香織に、僕は一瞬目を奪われーーーーたが、直ぐに気を引き締める。香織の、唯一の弱点とも言える箇所、それが今、白日の下露わになる。
「………私、このテストが終わったら瀬野さんとデートに行きたいなって……」
彼女は、天然フラグメイカーなのだ。それも、死亡フラグ8、恋愛フラグ1、その他、の割合なので結構困る。
「…………それ、多分対象が僕になるパターンだから考えるのやめようね」
流石に、学校生活中に早々マジモンの死亡フラグが立つ事もなく、せめてテストの凡ミスや備品の故障、何も無いところで転ぶーー程度なのだが、そもそもの話が、そんなオカルトチックな事象を信じる方が馬鹿馬鹿しい。なによりそれは、彼女を裏切る事になる。故に、ただの僕の不注意だ。例え、彼女と付き合い始めてから上記の現象が日に日に増加して行くのも。決して。うん。
「瀬野さんは私とデートなんて行きたくないと!?」
「誰もそんな事言ってないよね」
「では、何故……?」
「いや、ここで仮に凡ミスをすれば僕のせいってなるんだけどさ、少しでもその可能性を減らしたいと言うか……」
「瀬野さんは凡ミスなんてしません!」
「その信頼は何処から来るのかな?」
彼女は、天然フラグメイカーにして少々ポジティブなところがある。ネガティブよりはまだマシだとは思うが。
さて、僕の葛藤をスッパリ切ってくれた彼女にどう言い訳をしようか。
先程も言った通り、僕は香織の建てる死亡フラグに半信半疑だ。だからと言って、身に起こる不幸を偶然の一言で切り捨てるのも少し無理があるくらいには、どんどん運がなくなっている気がするのだけれど。
「えっと……デートは僕も行きたい。けどね?別にテスト後じゃなくてさ……ほら、テスト中でもいいわけじゃ無い?」
「テスト中にそんな事をして言い訳ないでしょう!」
「真面目か畜生ーーじゃなくて、ね、言い方があるじゃない?テストが終わったらデートに……テスト終わりにデート……明後日デート行こう!とか!」
「そうですね!テスト終わりです!」
「イベント事とデートを絡ませるのは止めよう!?デートってさほら!何もない日常にスパイスを与える役割を持つから楽しいのであって!スパイスにスパイスぶち込んでどうするの!?」
「違いますよ瀬野さん……」
「香織……」
「デートはどちらかと言うとジェラートです!」
「そうじゃないんだよなぁ!」
「瀬野さん……」
「……はい」
「私は、どうしてもテスト終わりにデートへ行きたいのです。………ダメですか?」
「……う、うん……行こう」
それは卑怯だ。ズルい。潤んだ瞳で上目遣い。僕の身長が低い事もあって、香織との身長差は殆どない。故に、上目遣いは香織がわざわざしゃがんで繰り出すーーそう、切り札とも言える。その時に湧き上がる衝動とか征服感とか、ゾクゾクとか、もう言葉に表せない程。
ドクロマークの付いた旗が僕の外堀をどんどん埋め、身動きの取れなくなった身体の左胸ーー心の臓を一突きにする。あっさりと、フラグが建ってしまったようだ。
そして、翌日。
テスト中、換気のため先生が窓を開けたら突然カラスが教室に侵入し、何故か僕の上を5分程旋回していると、それ見かけた黒猫(何故が廊下にいた)が、カラスと乱闘を始めてしまい、自己評価70点以上のテスト用紙を存分にぐちゃぐちゃにして行きやがった。結果、テストは後日ーーと言うより一時間繰り下がる形でクラス中が受け直すことになり、クラスメイトからは【疫病神】と揶揄われ、集中力の切れたテスト結果は散々だったと表記しておく。
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