バケモノを殺すのはいつだってストロング0だ
山賊たちを酔い潰した俺たちは、一路街へと急ぐ。あんな山賊みたいな連中にまた出逢ったらたまったもんじゃない。面倒臭いことこの上ない。
「ありがとうございます、異能者様」
「いや別に構わねぇよ。あんな連中がゴロゴロいるのか?」
「普段はそんなこともないんだけど……」
アニスにそう聞いた瞬間、イヤな予感がビンビンする。山賊対策に割けるコストが少ないということは、他に人材を投入しなければならない何かが起きているということだ。つまり、この近くで厄介ごとが起きている。だとすると俺たちが巻き込まれる可能性もあるな。
「街ってのは魔物に襲われたりしないのか?」
「城壁がございますからそうやすやすとは落とされません」
「空から来たりはしないのか?」
「空から?いえ……」
今のところは飛行タイプの魔物は考えなくていいか。この上飛行する敵と会うとか考えたくもない。ストロング0でエネルギー補給をしつつ、先を急ぐことにしよう。
しばらく街道をゆくと、何やら地響きが聞こえて来たではないか。まさか……。
「魔物の襲撃だぁ!」
「早く街へ避難しろ!」
近くの畑で働いていた農民が次々と街道を走って行く。これはまずい。予想していた最悪のパターンじゃないか。
「俺たちも急ぐぞ!」
「はい!」
俺とアニスとじじぃは駆け足で街道を行く。遠くの方に城壁が見えて来た。が、さっきの農民が走って戻って来たではないか。
「おい!あんたらなんで戻って来るんだ!」
「魔物が街道を進んで街に侵攻してるんだ!」
なんだよそれは!せっかくの城壁にも入れなければ意味がない。どうする?
「おしまいじゃ……」
「おじいちゃん……」
みんなこの世の終わりみたいな顔をしてやがる。農民たちも似たようなシケたツラをしている。まぁな、よくわからんけど、女は犯され男は殺され抵抗もまともにできないんだろうな、普通は。
「ストロング0」
「い、異能者様?」
「お前ら、まず飲め」
「ええっ!?」
缶を開けて一気に飲む。飲み干してから、
「ストロング0ロング、ストロング0ロング」
アニスとじじぃに一本ずつ渡す。アニスたちはキョトンとした表情で受け取る。あ、そっちのノーミンズにもあげないとな。
「ストロング0、ストロング0」
「あ、あの?」
ノーミンにもストロング0を渡す。
「これは末期の酒ですか?」
「バカ言え。景気付けの酒に決まってんだろ」
「景気付け?」
「おい、あんた異能者だったのか?」
「まあそっちの表現ならそうだな」
「でも凄い数だったぞ?10や20じゃない」
確かに苦戦はするだろう。しかし……先ほど新たに俺に身についた能力、異能があれば、おそらく……
「なるべく離れるなよ。俺がみんな始末する」
「始末?そんなことできるのか?」
「ストロング0サーバー」
ノーミンの質問に答えず、俺はストロング0サーバーを取り出し、皮ひもで背中にくくる。ストロング0サーバーの注ぎ口に革袋を加工したチューブを用意する。
小鬼のようなヤツが数体こちらに向かってくる。口に血が付いてやがる。まさか人間でも食ったのか?サーバーの蛇口を開く。サーバーから噴射されるストロング0。小鬼に向けて猛烈な勢いでストロング0がかかる。
「クギャっ!?」
ヤツらは目を抑えて悶えている。目潰しは成功だ。もんどりうっている連中に近づきながら、俺は新たな能力を発動させる。
「近接ストロング0ぉ!」
相手の胴体に掌を当てつつ、ストロング0を発動させる。
「プギュつ!?」
内側に出現したストロング0が、内臓を押し上げる。おそらく激痛が走っているのだろう、もんどりうっている小鬼。冷たい目をしたまま、俺は内臓にあるストロング0缶に拳を叩きつける。骨にでも当たったのか、缶が破裂したようだ。ヤツは泡を吹きながら倒れる。
俺はまだ目を抑えている他の鬼に向かって行く。他にも試したい技がある。
「肺はここか。近接ストロング0サーバー!」
「プギュうう!?」
肺に大量のストロング0が入った小鬼は呼吸ができなくなった上、大量のアルコールが瞬時に血中に回っているのか一気に真っ白い顔になる。暴れていたようだが、しばらくすると絶命した。
「心臓の方がいいか。近接ストロング0サーバー!」
「ミキゅ?プギゃあ!」
心臓に手を当て、ストロング0を直接心臓に流し込む。一瞬だけ激烈に暴れた小鬼だが、次の瞬間、電池の切れた人形のように崩れ落ちる。
「脳に叩き込む!近接!ストロング0サーバー!!」
小鬼の挙動がおかしくなり、そのまま倒れ落ちる。倒れて絶命している小鬼たちを見ながら思う……この技、危険すぎないか?
「い、異能者様?」
「す、凄い……ひっく」
自分で言うのもなんだが、どこにでも発現させられると言うのは危険すぎる。体の組織を破壊したりすることもできることになるよな。実際、目の前の死体がこの技の威力だ。
「まだまだいるよな」
「は、はい。たくさんいます」
今度は犬のような頭の連中がいる。6匹か。まずは先ほど同様ストロング0サーバーからストロング0を噴射する。目を抑える犬頭。さっきも見たなこの光景。
「そして。新必殺技だ。遠隔ストロング0サーバー!内臓に溢れろ!」
犬頭の胃や肺に、ストロング0が遠隔操作で入ったようである。ヤツらの顔色が土色になり、そして……絶命して行く。
大型のトカゲのようなヤツがこちらに襲いかかってくる。今度も!
「遠隔ストロング0サーバー!ダイレクトに脳を酔わせてやる」
ほぼ一瞬で昏倒する大型のトカゲ。いくらなんでも強すぎるだろこの技。ヤツらが気がついたのか、次々とこちらに向かってやってくる。
「ストロング0サーバー!目潰しはどうだ!」
ヤツらの目に入ったのを確認した俺は、掌を上空に向ける。
「ストロング0!ストロング0!おおお!」
叫び続け天空に無数のストロング0缶を出現させる。そのまま急いで離脱する。次の瞬間。無数のストロング0缶が、ヤツらの身体に襲いかかった。直撃だけで絶命したヤツも多いな。にしても自分で言うのもなんだが凄い匂いだ。
「近接!ストロング0おぉ!!!」
かろうじて生きている連中を次々と襲い、ストロング0で内側から内臓を破壊し絶命させる。
「異能者様!」
「あとすこしで全滅させられるぞ」
トカゲのような人間のようなヤツが城攻めの用意をしている。間に合うか!?
「ストロング0タンク!これが壁だ!」
突然出現したタンクに向けて、トカゲ人間どもが破城槌を叩き込もうとする。バカどもめ、それは悪手だ。
タンクから大量のストロング0が噴き出す。トカゲ人間どもにストロング0がかかり、もんどりうっているところに俺が襲い掛かる。
「近接ストロング0サーバー!」
掌打とともに心臓に流れ込んだストロング0は、トカゲ人間の命を刈り取る大鎌と化した。トカゲ人間たちも一瞬で死体と相成った。
「これが……異能……」
ノーミンたちやアニスが俺を見る目が、恐ろしいものを見る目になっている。確かにこれはちょっとやりすぎたか?しかし、やらなければ死んでいたぞ。
「そこまでです」
不意に、美少女がそう告げる。誰だ?眼は瞑っているが、整った大きな眼であろうことが予想される目鼻立ち、白磁のような肌……
「これ以上、その異能を使わないでもらえませんか」
「異能?ストロング0か?」
「よくわかりませんが、あなたの異能ですか。だとしたらそうです」
「何故に?」
キビしい表情で、美少女が告げる。
「世界が、滅ぶから」
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