Extra Phase avenger 07

 西日が差し込んでいた。

 ステンドグラスを透過する光も心なしか、橙じみている気がする。


 シロガネは1人、祭壇の前で立ち尽くしていた。

 気が付けば辺り一面に死体が転がっていて、床に血が染みを作っている。


 復讐は終わった。

 少なくとも、両親の分は決着がついたと思う。


 わかってはいたが結局、何も残らなかった。この先、彼女を待っているのは死だけだし、たとえ後ろを振り返っても、そこには積みあがった死体があるばかりだ。

 それでも進み続けるのが、復讐の鬼というものだろう。


「……ほんと、よく言ったもんだよ」


 オトナシの死体に呼びかける。当然、返答はなかった。


「…………」


 自分も一歩間違えて――シオンに出会っていなかったら、あの中にいたのだろうか。

 捨て駒オートマタとして生かされる自分を想像するだけで寒気がする。

 本当に彼女は、わたしに多くのものを残してくれた。


「……シオン」


 髪を留めていた赤いヘアピンを外し、手先で弄んだ。

 これも彼女が残してくれたものの1つ。彼女の象徴、いわば存在した証明だ。 


 赤で良かったな、と思う。いくら返り血を浴びても目立たないから。

 それを着け直し、シロガネは身を翻した。

 

 そろそろ行かなければ。


 いつまでもここに留まっているわけにはいかない。

 クウハク、オトナシ姉妹は正式の戦闘サイボーグだから、死体は裏社会の廃品回収業者が勝手に持っていくだろう。

 他のヒトの殺害はそいつらに擦り付けてやればいい。


 それよりも、次の復讐の準備だ。

 ヒトコウベは組織の幹部だから、当然組織の中枢に繋がっているはず。だとすれば、その情報は大きな武器になる。

 彼のオフィスをあたってみようか。


 そんなことを考えながら祭壇に背を向け、出口へと歩き出した。

 血だまりに足を突っ込み、死体を踏み越えながら。


 シオンを殺した奴らを、殺す。

 ただそのためだけに彼女は生き続ける。

 血で血を洗い続けるのだ。


 終わり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SHION 朝霞 はるばる @ff5213

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ