ぼくの今いる場所からは戦場は見えない
リサ モリ
第1話
ぼくの目の前に小鳥が二羽飛んできた。冷たい風に吹かれても気にせずジッと座り込んだ。胸の毛がモコモコして毛糸玉のようだった。
この草原のずっとずっと遠くでは戦争が起こっていると学校の先生に教えてもらった。
そこには何か良いものは全く存在しない。
ここに吹く心地よい風も、ただ硝煙の匂いを運ぶ不吉な風となり、愛する人に触れていた手で銃の引き金を引く。
でもぼくのいる場所からは戦場は見えない。
見えるのは二羽の鳥だけ。
ねえ神様。
ぼくは父さんも母さんも妹のミミも元気でご飯がおいしく食べられたら、それで満足です。
鳥たちは怒りも憎しみも不安も無いから、ぼくたちよりほんの少し幸せなのかな。
ぼくは一つくしゃみをした。
そして二羽の鳥は飛んで行った。
ぼくの今いる場所からは戦場は見えない リサ モリ @lisa_mori
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