とてつもなくて面白い

評論家は形容詞を使ってはいけないそうです。
料理評論家なら『おいしい』
映画評論家なら『面白い』
そういう安易な表現を使うようではプロ失格であると。
そのせいなのか、百年以上だれも足を踏み入れたことのない洞窟のような深い味わいだとか、この作品を墓地で上映すれば興奮のあまり死者たちがよみがえるに違いないとか、表現力豊かな意見が雑誌の中にあふれています。

作品のレビューを書く場所でなぜ関係のない話をしているのかと思われているかもしれません。
私は料理でも物語でも、可能な限り予備知識を持たずに、まっさらな状態で楽しんでいただきたいと考えます。
お弁当のフタを開けるときのわくわくは、その向こうに何が待っているかわからないからこその高揚ではないでしょうか。
この物語もそうです。
不可思議で中身の見えないタイトルは否が応でも想像力を刺激されます。
物語の表紙をめくれば、きっとあなたを驚かせる発見が詰められているでしょう。鼻を近づけてください。いい匂いがするでしょう?
どうぞ心行くまで味わって、あなたの声を聞かせてください。
幸い私は評論家ではないので、最高に安易な表現でこの作品を評することができました。

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