第7話 そして全ては逆転した
ふと横をみると、ビックリした顔のたーちゃんが未だにベッドに横たわっていた。
これは使えるかもしれない。
僕は机からハサミを取り出すと、すばやくたーちゃんを抱き寄せ、彼女の喉元にハサミを添える。
「きゃっ!」
「なっ!」
「おっと、動かないで貰えるかな? 僕はまだ諦めてないから!」
そうここで易々と負けを認めるだなんて野暮だ。
僕は勝たないといけないのである。
「そうだよ。僕が彼女を突き落としたんだ。でも、殺意は無かったんだ。ほんの脅しのつもりだったんだ。上手く受身を取ってくれると思ったのに残念だよ。まさか、彼女の彼氏に見られていたとはね。でも、そんな事はどうでもいい。僕はたーちゃんを人質にココから逃げるからね」
「ふーん。で?」
アスはまるで興味無さそうな返事をする。
「君はココで引いてもらおうか?」
「俺がそんな簡単にはいそうですかって引き下がると思うかい? 俺はこう見えても頑固者でね」
アスはポケットからあるものを取り出した。
それはなんとボイスレコーダーだった。
「なっ……」
なんと彼はこの会話の一部始終を全て録音していたのだ。
「コレを提出すれば、君ははれて善良な学生から反転して犯罪者だ。おめでとう」
「ふざけるな! 彼女がどうなってもいいのか?」
僕は遂に頭に血が上って本格的にアスを脅し始めた。
「たーくん? そろそろ元に戻っていいよ?」
アスはまるで女性のような声でたーくんと呼んだ。
ん? たーくん?
「さっさと離せ、変態野郎が!」
たーちゃんがいきなりドスの効いた低音ボイスになったかと思うと僕の手首を掴んでねじってきた。
余りの痛さに僕は持っていたハサミを床へと落す。
「え、え、男?」
たーちゃんがいきなり男性に代わってしまったのだ。
「何時の間に入れ替わったんだ?」
「最初からさ。俺は男装の女子高生探偵、たーくんは女装の高校生探偵なんだよ」
アスは高い声のままでニコッと笑った。
「僕を嵌めていたのか」
「最初から俺たちは性別名乗ってないからな。勝手にお前が勘違いしただけだ。さて、たーくん、そろそろショウには静かになってもらおうか?」
「そうだね、あーちゃん。次起きたときはパトカーの中でしょうけど、安心して眠っていてくださいねー」
そう言って彼はフフッと笑って、僕の口に布を被せた。
「まって、コレって、クロロh」
僕は言いかける前に意識を失ってしまった。
これで、僕の物語はオシマイである。
次目が覚めたとき、彼らが言った通り本当にパトカーの中だったり、あのあと才宮高校のトンでもないスキャンダルがあったりとしたけど、すべてどうでもいいことである。
これは、『
(了)
リバーシブル 黒幕横丁 @kuromaku125
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます