おはなし

「ジャパリパークのサンタクロース」というお話。


 サーバルは、元々はさばんなちほーで暮らしていたフレンズだ。彼女は、ある日出会った迷子のフレンズに「かばん」と名をつけ、彼女の正体を知るための旅を終えてからは、日の出港の近くにある小屋で、かばんと一緒に暮らしていた。


 ある朝、サーバルは窓の外を見てびっくりした。雪が降っていたからだ。サーバルは思わず、かばんに駆け寄った。


「かばんちゃん!どうしよう!私達なんだかよくわかんないけど、お家ごとゆきやまちほーに飛んできちゃったみたい!」


慌てるサーバルを見て、かばんは笑った。それから、彼女は窓の外を指差した。


「違うよサーバルちゃん。よく見てよ、地面に雪が全然積もってないじゃない。でも、ゆきやまちほーじゃなくても、雪って降るんだね」

「日の出港を入れタ幾つかの地方にハ、『四季』がアルンダヨ。今ハ冬ダネ」

「なんだかよくわかんないけど面白そう!外に出てみようよ!」


そう言うとサーバルは勢い良く外に飛び出したが、すぐに小屋の中に戻ってきた。


「寒いよー!」


サーバルは身体を震わせながら叫んだ。かばんは、前にサーバルがゆきやまちほーで凍えていた事を、思い出した。サーバルは、寒いのがすごく、苦手だ。

かばんが小屋の中を探すと、厚手の生地でできた、赤い服と、黄色い服があるのを見つけた。それに、マフラーもあった。なんだかとても、暖かそうだ。

かばんは、サーバルが寒くないように、彼女の首元にマフラーを巻いてやった。それから、かばんは赤、サーバルは黄色の暖かそうな服を着て、仲良く外へ出た。白い雪が、穏やかな風に吹かれてふわふわと、空を舞う。サーバルはその様子に、目を輝かせて、時々飛び跳ねながら歩いた。とても、楽しそうだ。


 やがて2人は、ロッジの近くまでやってきた。すると、ロッジの前で、PPPぺパブの5人が歌の練習をしているのが見えた。しかも、かばんとサーバルが、聴いたことがない歌だ。

そのメロディはとても美しく、何処か心が暖かくなるような、そんな気分にさせてくれた。歌が終わると、2人は思わず、拍手をした。


「おお!かばんさんにサーバルじゃないですか!」


マネージャーのマーゲイが、声を掛けた。ロイヤルペンギンのプリンセスは、かばん達がいつの間にか自分たちの前にいたので、びっくりした。


「こんにちは、マーゲイさんにPPPの皆さん」

「ビックリした!いつからそこにいたの?」

「ついさっき来たばっかりだよ。それにしても、すっごく綺麗な歌だったね!なんて歌なの?」


サーバルの言葉に、マーゲイが眼鏡を輝かせた。


「ふふふ、古来よりこのジャパリパークに伝わる聖なる歌、クリスマスソングよ!」

「くり……す?ます?なぁにそれ?」


サーバルが首を傾げていると、博士と助手が、ロッジの中から現れた。


「お前達も来たのですか。ちょうど良かったのです」

「我々の計画に協力するのです」

「あ!博士と助手!なになに?またなんか面白いことするの?」

「勿論なのです」

「このロッジでクリスマスをやるのですよ」

「あの、クリスマスって一体なんのことなんですか?」


かばんが、博士に訊ねた。


「これはお前にとっても大事なことなので、賢い我々が教えてやるのです」


博士が自慢げに語りだす。


「ジャパリパークでは毎年、雪が降る時期になると、ヒトやフレンズ達がみんなで集まって飾り付けや食事をしたり、プレゼントを贈りあったり、歌を歌ったりするお祭りを開いていたらしいと言うことが、この前新たに発見した本に書かれていたのですよ」

「そのお祭りが、クリスマスというのです」

「そして、そのクリスマスの為の歌を歌うように博士達から頼まれたのが、私達というわけなんだ」

「それで、その為に、リハーサル中ってわけ!」


コウテイとプリンセスが、誇らしげに胸を張って言った。


「オレ的にはこの歌、なんだかあんまりロックじゃなくてくすぐったいけどなー」


イワビーは、なんだかちょっと恥ずかしそうだ。


「私は好きですよ、この歌。早くみんなの前で歌いたいです!」

「美味しいものもいっぱい食べられるんだって〜、楽しみ〜」


ジェーンとフルルも、クリスマスをとても、楽しみにしている。

サーバルは、何だかわくわくした。彼女は楽しい事が、大好きだ。


「なんだかすっごく楽しそう!私もやりたい私もやりたい!」

「サーバルはまあ勝手についてくるのでともかく、かばん。我々は是非お前にもクリスマスの準備を手伝って欲しいと思って、丁度お前のところへ行こうとしていたのですよ」


博士が、サーバルから顔を背けながら、かばんに言った。かばんも、まだわからない事が色々あったが、クリスマスはなんだか面白そうだと思った。


「僕でよかったら是非手伝わせてください。それで、僕は何をしたらいいんでしょうか?」

「クリスマスには、キラキラした飾りと、それから、それを取り付ける為の『つりー』が必要不可欠なのです」


また、聞き慣れない言葉が出て来たので、サーバルは首をかしげた。


「つりー?なぁに、それ」

「いちいち説明するのも面倒なのです。見ればわかるのです」

「お前達には『つりー』を湖畔まで取りに行って欲しいのです。偶然にも雪山を越えるのにはいい格好をしているようなので」

「クリスマスは夜にやるのです。それまでには戻ってくるのですよ」


 『つりー』って、一体なんだろう?かばんとサーバルはそう思いながらも、クリスマスが楽しみだったので、快く、仕事を引き受けることにした。湖畔までは距離があるので、かばんはラッキービーストに近道を訊ね、そのルートを通って行くことにした。博士と助手は、『ばすてきなもの』を、かばんとサーバルに貸した。ロッジから雪山の麓までは、これを使って楽に、そして歩くより速く、移動ができる。

雪山をその『ばすてきなもの』で越えることはできなかったので、2人は歩いて雪山を越えることにした。幸い、天気も良く、太陽の光が暖かかったので、難なく雪山を越える事ができた。

そこから近道を通って、しんりんちほーを避けてへいげんちほーを通り過ぎ、2人は湖畔に辿り着いた。湖畔では、アメリカビーバーとオグロプレーリードッグが、興奮した様子で、2人を待っていた。


「かばんさんにサーバルさん!よく来てくれたっす!」

「もしかして、『つりー』を運びに来てくれたでありますか!」

「はい。その『つりー』って物がどんな物か、まだわからないですけど……」

「じゃあついてくるっすよ、今回はオレっち珍しく自信あるっす!」


 ビーバーとプレーリーの後をついて行くと、そこには他の木と比べるとすこし小さく、けれども、他のどの木よりも形の整った、美しい木が立っていた。

ビーバーは、絵の描かれた紙を、かばんとサーバルに見せた。沢山のキラキラした飾りが、木に取り付けられている。


「これが『つりー』っすよ!見てください、博士がくれたこの絵に描かれた木と、今目の前にある木。そっくりじゃないっすか?」

「ホントだ!すっごーい!」

「でも、飾りがないよ?」


喜ぶサーバルの横で、かばんが心配そうに言った。だが、プレーリーは余裕たっぷりだ。


「心配ご無用であります!飾りは博士と助手と、それから、ライオン殿とヘラジカ殿達が、あちこち探して集めてくれているのであります!」

「あと、アルパカが、カフェにキラキラ光る飾りなんかもあるから紅茶と一緒に持ってくるって言ってたっすね」

「なるほど……じゃあ、後はこれを運ぶだけですけど、どうやって運びましょうか」

「それもバッチリっすよ!」


ビーバーは、木の後ろから、木でできた、大きな荷車を引っ張り出して来た。とても、頑丈そうだ。


「何かを作る時の材料を運ぶのに楽なように、ジャガーさんのいかだを参考に作っといたものがあるっす。これを使って運ぶっす!」


それから、ビーバーとプレーリーは注意深く、木を倒した。木は真っ直ぐ荷車に向かって倒れ、見事に荷台に乗っかった。


 かばん達は、ロッジに向かって荷車を引いて引き返し始めた。途中で、ビーバーとプレーリーの家の前を通った。すると、かばんは前と違うところがあることに気が付いた。


「ビーバーさん、あれ、なんですか?屋根の上にある、おっきい柱みたいなもの」

「ああ、あれっすか。アレは、『えんとつ』っていうらしいっす」

「えんとつ?」

「博士が言うには、クリスマスにはサンタクロースなる白と赤の毛皮のフレンズが、そのえんとつのてっぺんの穴から、素敵なプレゼントをしてくれるそうでありますよ!」

「オレっちたち、是非そのサンタクロースに会ってみたくて、急いでえんとつを作ったんすよ」

「へぇー!そんなフレンズがいるなんて知らなかったなぁ。ねえかばんちゃん、私達のおうちにもえんとつ、あったかなあ」

「どうだったかなぁ。でも、もしあったら、僕たちも会ってみたいね」


 サンタクロースのことも気になるが、今は、ツリーをロッジまで、運ばなくちゃいけない。かばん達は、ツリーを積んだ荷車を引いて、雪山までやって来た。深く積もった雪の中を、荷車を引いて進むのは、かなりの重労働だ。かばんとサーバルが前で一生懸命、荷車を引っ張り、ビーバーとプレーリーが後ろから力一杯、荷車を押した。途中、あまりにも雪が深くて進めないところがあると、その度に立ち止まって、みんなで雪をかき分けてから進んだ。そうしているうちに、どんどん、日は傾いていく。


 やっとの事で、4人は、これからロッジへ行こうとしていたギンギツネとキタキツネのいる温泉宿に、辿り着いた。みんなもう、ヘトヘトだ。


「大丈夫?」


ギンギツネが、心配そうに声を掛けた。


「こ、こんなに、荷物を持って雪山を越えるのが大変だなんて、思わなかったっす……」

「そんな装備で大丈夫?」


キタキツネが、荷車を見て言った。

その時、かばんは、ある事を思い出した。


「ギンギツネさん、僕たちがセルリアンから逃げる時に使った『そり』!まだありますか?」

「勿論、あるわよ。キタキツネが気に入っちゃって、大事にしてるわ」

「キタキツネさん、『そり』を僕たちに貸してくれませんか?日が暮れるまでに、ツリーをロッジまで運ばなきゃいけないんです」

「いいよ。これが雪山越えには一番いい装備だから」


 かばんとビーバーは、荷車の車輪と、板を何枚か、取り外した。その板を使ってソリを少し大きくして、6人で協力して荷台を持ち上げ、上に乗せた。そして、ツリーと、荷台と、ソリがバラバラにならないように、縄できつく縛って、固定した。


「準備完了ですね!行きましょう!」


サーバルとビーバーとプレーリーが、力一杯、後ろからソリを押した。やがて、下り坂にさしかかると、ソリは勢いよく、雪山を滑りだした。


「うおおおお!?速いであります!!」

「わーい!やっぱりそりはたのしーね!」

「そ、そうっすか?振り落とされそうでちょっと怖いっすよ……」


ビーバーは不安そうにしていたが、サーバルとプレーリーは、大はしゃぎだ。

ソリの前の方では、かばんとギンギツネとキタキツネが、右へ左へと忙しなく動いて、舵を取った。

ソリはぐんぐんと、スピードを上げる。でも、それと同じくらい、太陽はどんどん、沈んでいく。けれど、ここを越えれば、ロッジはすぐそこだ。

ところが、途中で、急に天気が崩れてきた。

激しい吹雪が、かばん達に吹き付ける。辺りも暗くなり始め、視界がどんどん、悪くなっていく。そのせいでかばんは、前方に大きな雪の吹き溜まりがある事に気が付かなかった。ソリはぐんぐんとスピードを上げたまま、思い切り、吹き溜まりの中に突っ込んでしまった。

かばん達は、その衝撃で、前の方へと、放り出されてしまった。


「サーバルちゃん!みんな!大丈夫ですか!?」

「うみゃあ……何が起きたの?」

「雪の吹き溜まりに突っ込んだのね……」


キタキツネとビーバーは、頭から地面の雪に突っ込んでもがいているプレーリーを、引っ張り出しているところだった。

かばんは、吹き溜まりに突っ込んだソリを見た。雪を被ってはいるが、どこも壊れている様子はない。ツリーも、無事だ。

すると、突然、サーバルが身構えた。


「どうしたの?サーバルちゃん」

「どうしよう、セルリアンだよ!」


サーバルのその言葉に、全員が息を呑んだ。そして、サーバルの向く方を見た。

紫色のセルリアンの大群が、一目散に、かばん達に向かって来る。かばん達は、大急ぎで雪の吹き溜まりからソリを掘り出そうとした。だが、雪は硬く、なかなかソリを掘り出すことができない。セルリアンはどんどん、かばん達に迫って来る。誰もがもうダメだと思ったその時、突然、大きな音と共に、セルリアンが遠くへ、次から次へと、弾き飛ばされた。


「よーし、なんとか間に合ったな」


かばん達の前にはいつの間にか、とても頼もしいフレンズ達がいた。ヒグマとキンシコウ、そしてリカオン。セルリアンハンターの3人組だ。


「皆さん、ここは私達に任せて。早く『つりー』をロッジへ!」

「無事にみんなでクリスマス、やりましょう!」


キンシコウとリカオンが、セルリアンに向かって構えながら言った。かばんは、ヒグマ達セルリアンハンターの方を見て、帽子を被りなおした。そして、大きく息を吸った。


「よろしくお願いします!ありがとう!」


かばんはそう叫ぶと、再び、ソリを吹き溜まりから救出しようとした。けれど、その必要は、もうなかった。


「こんな話を知っているかい?オオカミは雪道の達人だってね。さぁ、急ごう」


 かばん達は再び、雪の中を進み始めた。


「どうして僕たちのところに?」


かばんが、タイリクオオカミに訊いた。オオカミは、笑いながら答えた。


「君らしくない愚問だね。君達がなかなか戻って来ないから、みんな心配していたんだ。だから、博士の指示で、もしもの時のことも考えて、ハンター達を連れて探しに来たのさ。そしたら、君たちとセルリアンの匂いがしたから来てみたら、ってところかな」

「そうだったんですか……ごめんなさい、ご心配をおかけして」

「気にするなよ。私も入れて、みんなが、みんなで一緒にクリスマスってやつをやりたい、それだけさ」


オオカミは、ロッジのある場所へ続く安全な道を、完璧に覚えていた。かばん達は、オオカミの指示を受けながら、また、右へ左へと、忙しなく身体を動かした。そして、一行はついに、雪山を突破した。


 雪山の麓では、アライグマとフェネックが、『ばすてきなもの』の前で待っていた。かばん達は急いで、ソリと荷台を切り離し、再び、車輪を取り付けて荷車を作った。途中で、ヒグマ達も追い付き、かばん達の作業を手伝った。そして、ソリと荷台を縛り付けていた縄で、荷車と『ばすてきなもの』を、繋いだ。アライグマとフェネックが、運転席に座り、かばん達は後ろでツリーが荷台から落ちないように、支えている。

それから、アライグマは全速力で、ペダルを漕いだ。フェネックも、負けないくらい頑張って漕いだが、ツリーは重く、体力が続かない。そこで、サーバルが、アライグマの隣に座って、ペダルを漕ぐことにした。


「よーし!行っくよー!うみゃみゃみゃみゃみゃみゃー!!」


サーバルは叫びながら、目にも留まらぬ速さで、ペダルを漕いだ。アライグマはついていくだけでも精一杯だったが、負けじと、漕いで漕いで、漕ぎまくった。


 ロッジでは博士と助手と、PPP、それからたくさんのフレンズ達が、心配そうに、ツリーの到着を待っていた。もうすぐ、日が沈む。


「うみゃみゃみゃみゃみゃみゃー!!」


すると、遠くから聞き慣れた声が、聴こえてきた。その声に応えるように、カバが叫ぶ。


「サーバルよ!サーバル達が『つりー』を運んで来たわ!」


全員が、大歓声を上げた。ついに、待ちに待ったクリスマスツリーが、到着したのだ。


「お前達、よくやったのです!心から感謝するですよ、この島の長として!」

「きっと最高のクリスマスになるですよ!」


博士と助手も、これまで見たことがないくらいに、興奮している。そして、その場にいたフレンズ達が、一斉にかばんとサーバル達に駆け寄り、彼女らの手を取り、口々に、ありがとうと言った。かばん達は疲れきってはいたが、やりきった、という思いで、いっぱいだった。


 それから、ツリーは力自慢のジャガーとオーロックスに、ロッジの前に立てられた。博士と助手の指示で、高いところは、トキやアリツカゲラに、低いところは、ライオンとヘラジカと、その仲間のフレンズ達に、飾りつけられていった。


「寒かったでしょぉ、はい、どーぞ、どーぞぉ」


アルパカが用意してくれた温かい紅茶を飲みながら、かばん達は、その様子を眺めていた。

そうして出来上がったツリーを見て、皆はまた、歓声を上げた。緑の葉っぱについた白い雪が綺麗な模様として浮かび上がり、沢山の飾りがキラキラと、輝いている。

ビーバーは、博士に貰った絵と、目の前にあるツリーを、何度も交互に、見直した。そして、思わず、涙を流した。プレーリーは、そんなビーバーの肩にそっと、手を置いた。


「この『つりー』は……オレっちにとっての最高のプレゼントっす……!」

「本当でありますなあ。私もこの『つりー』が見られて本当に嬉しいでありますよ。しかし、かばん殿の協力なくしては、ここでこうしてこの『つりー』を見ることはなかったかもしれないわけでして……ん?」


プレーリーは、かばんの方を見た。彼女は、赤い服を着ている。それから、雪山でついた雪が、まだ、身体のあちこちに、白く残っている。


「そうか!そういうことでありますか!!かばん殿!かばん殿!!」


プレーリーは、突然叫ぶと、かばんの元に駆け寄った。そして、その場のフレンズ達全員に、呼び掛けた。


「みなさん!!聞いて欲しい事があるのであります!!」


突然のことに、かばんは、戸惑った。


「ど、どうしたんですか?プレーリーさん」

「いやー、かばん殿!この『つりー』は、私どもにとっての最高のプレゼントなのであります!しかし、かばん殿が、私どもが暮らす湖畔から、この『つりー』を運んでくれなければ!この最高のプレゼントは存在しなかったわけであります!」

「は、はい。それで……?」

「つまり、私どもにこのプレゼントを運んで来てくれたのは!かばん殿というわけであります!そして!かばん殿は赤い毛皮と!白い雪を纏っているのであります!赤と白!そしてプレゼント!つまり、かばん殿は、私どもの、サンタクロースなのでありますよ!!」


一瞬、辺りが静かになった。だが、すぐにこれまでにないくらいの、大騒ぎになった。


「確かにその通りなのだ!かばんさんはみんなのサンタクロースなのだ!!」


アライグマのその言葉に、コツメカワウソもぴょんぴょん飛び跳ねて、喜んだ。


「わーい!サンタクロース!サンタクロースー!」

「え?でも、博士達の話じゃサンタクロースってえんとつ?って所から来るんじゃ……」


首をかしげるジャガーの肩に、フェネックが手を置いた。


「まーまー、この際細かい事は気にしないでさー。よっ、かばんさーん、サンタクロースー」

「やっぱりかばんちゃんはすっごいや!かばんちゃんは、ジャパリパークのサンタクロースだね!」


サーバルはそう言うと、かばんに飛びつくように、抱きついた。彼女の笑顔は、ツリーの飾りの何倍にも、輝いていた。


「でも、僕1人じゃきっとできなかったよ。このツリーを見つけて、運ぶ為の荷車を作ったのはビーバーさんとプレーリーさんだし、それに、サーバルちゃんや、みんなにまた沢山助けてもらったから……」


かばんはそう言おうとしたが、その声はフレンズ達の歓声に、かき消されてしまった。


 それからかばんは、フレンズ達に次々に抱きつかれたり、胴上げされたりと、まるで嵐のような大騒ぎのど真ん中に立たされる事になった。けれど、みんなの笑顔を見て、かばんも嬉しくなった。そして、宙を舞いながら、かばんは今までに出したこともないくらいの大声で、笑い出した。どったんばったん大騒ぎの、ジャパリパークのクリスマス。けれどもまだ、始まったばかり。それからかばん達は、最高に楽しいパーティーを、過ごしたのだった。


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けものフレンズ ~ジャパリパークのサンタクロース~ Kishi @KishiP

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