稀代の天才と謳われる少年は、妹の命を救うことに全てを捧げて医師になった。
アメリカに亡命した旧ソ連の天才女史は、犯した過ちを償う意味を込めて誰かを救いたいと願う。
そんな二人の天才が出会った時、一つのプロジェクトが始まった。
医療や政治の枠を超えた交渉術。
スパイ映画顔負けのハラハラする脱出劇。
そして、心温まる甘い学園生活。
魅力ある登場人物たちの想いと願いが、まるでジグソーパズルのピースように組み合わさりながら進む物語は圧巻です。
物語中盤と感動のラストは熱いものが込み上げます。
ジャンルはSFすが、壮大な愛がテーマのヒューマンドラマの群像劇。
是非ご一読を!
二人の天才がいた。
一人は旧ソ連で、倫理を超えた人体実験を繰り返し、人間兵器をつくりだそうとしていた。
もう一人は日本で、心臓に疾患を抱えた妹を救うために、人生のすべてをかけようとしていた。
二人の出発点は、ともに絶望の底だったろう。
しかし彼らがその絶え間ない努力で進んでいく先に何があるのか。
私は、こんな例を持ち出すのはふさわしくないかもしれないが、この作品を読んでいるときサイモン・シンの「フェルマーの最終定理」を読んだときのような知識の層を潜っていく心地よさと、見えないピースを探して焦がれて、もがきながらも進んでいく強い熱を感じた。
さらにそこに、幾重にも折り重なる人間の愛と信頼の物語が加わってくる。
そんな話が面白くないはずがないじゃないか。
正直にいうと、何回か泣いた。
この作品のジャンルはたしかにSFだろう。しかし、重量級のヒューマンドラマでもある。
どうしてこんなものが書けるのだろう。
素晴らしい物語に純粋に強く心を揺さぶられると同時に、この作品を書ける才能にも嫉妬した。
この物語に出会えてよかったと心から思う。読ませてくれて、本当にどうもありがとう。
一握りの天才だった少年が、家族を救う為に奔走して奇跡を起こす。言葉にすれば家族内の感動ストーリーに見えますが、科学的理論や知識を遺憾なく発揮した倫理尽くめの説明から作家様のSF知識と、それに付随する関連知識が宝庫のように存在する事が窺われます。
そういったSF知識は勿論、ストーリー内で交差する人間模様と男女関係の姿も見物です。そして今の現代社会が忘れがちな様々な愛――家族愛・親愛・恋愛――が作品に凝縮されており、造詣が深いSF小説と組み合わさって素晴らしい作品として仕上がっております。
多くの人に読んで頂きたいと純粋に思える、素晴らしい作品でございますw